【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

まいりました ページ30

…握り締めた竹刀は左から右へ。横に水平を描いて彼のお腹目掛けて放たれた。これで終わらせる。この一太刀で勝つんだ。そう思いながら。確かな手応えを感じながら。額に浮かんだ汗を宙に散らしながら。私は迷いなく。迷うことを忘れたように、竹刀を振るった。彼の攻撃を何回も何回も受け止めた腕がビリビリと痺れている。無遠慮に床を蹴飛ばしてきた足の裏も。それらすべてが。感覚が、私の勝ちを確信させていた。私は彼に勝って、それから彼に、ちゃんと改めてぶつけるんだ。私は真選組として、一番隊副隊長として、戦場に立ちたいと。貴方のことを護れるように、貴方の傍で戦いたいと。その背中を護りたいと。逃げずに、自分自身の言葉で、伝えるんだ。首を横に振られてしまったとしても、何度だって。

…私はきっと、強くなったのだから。


竹刀は、沖田隊長の腹目掛けて飛んでいく。彼のそこに当てることが出来れば。そのギリギリで止めて、動けなくしてしまえさえすれば。そうしたら、私の勝ちだ。


…けれど、次の瞬間。


「ッ！？」


彼の腹に当たるはずだった竹刀は、止められていた。彼の竹刀によって。瞬く間に彼は竹刀の持ち方をその手の中で変えて、私の竹刀の動きを封じた。訳が分からなかった。けれど、すぐに理解する。彼がそんなあからさまな隙を見せるはずがない。腹をがら空きにさせるなんて、そんなことが、彼に限ってあるはずがなかった。なんで、もっと早くそのことに気付かなかったのだろう。数秒前の私自身のことが、酷く不思議に思えた。

けれど、悔いる時間すら、彼は与えてくれなかった。


私の竹刀は彼の竹刀に弾き飛ばされ、私の手のひらから飛ばされた。私が目を見開かせるよりも、それはもっと早く。


私の首元に、彼の竹刀が既に添えられていた。


「…、…まいり、ました…」


呆然としながら。未だ飄々としている彼に、私はそう呟いた。勝ったと思った。なのに、こんなに呆気なく負けてしまうなんて。気が抜けて一気に身体から力が抜けていく。私の呟きに、沖田隊長は満足げに笑って見せて、私の首元から竹刀をどけた。彼が私の敵で、竹刀が刀だったなら。私はもうここに立ってはいなかっただろう。

ふぃー、なんて。まだまだ余裕綽々と言うように彼は息を吐き出して身体を伸ばし始めた。私はまだ自分の敗北をうまく把握できなくて。信じられなくて、立ち尽くしていた。けれど、私は、負けたのだ。彼の剣に。

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