【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

いいことも、悪いことも ページ26

『俺は反対ですぜこんなチンチクリン』

『肝が据わってるだけじゃここではやってけねぇよお嬢さん。大人しく帰ることをオススメするぜィ』


私が真選組になるために、初めて屯所の門を潜った日のこと。冬真っ只中で、吐く息が白く色付いていた時のこと。沖田隊長が私に言い放った言葉を思い出す。彼は、女でありながら女人禁制の真選組に足を踏み入れた私を見ては、そんなことを言ったのだ。私はあの時、酷く苛立ったものだ。初対面の人間にそこまでめったうちに暴言を吐ける人が居るだなんて思っていなかった。いや、正確には彼と初めて会ったのは、それよりももっと前のことになるのだけれど、当時の私は彼とはその時初対面であると認識していたのだ。まぁ、初対面ではなかったとしても、あの時の彼の言葉はまぁ酷かった。私のことを見下したように。嘲笑っているようにそう言って、私を邪魔物のように扱っていたのだ。あんな言い方をされて、はい分かりました帰りますご迷惑お掛けしましたと頷けるほど、私は可愛くはなかった。

その言葉は彼が私の平穏を護るためであったことを今はもう理解しているけれど、それにしたってあの時の憤慨は覚えている。プライドなんて大それたものは掲げてはいなかったけれど、信念というか、決意というか、そういったものを踏みにじられたような気分だった。私のためだと分かっても、それなりに傷付いて、悔しさを味わった。

だから私は、真選組に入隊してから人一倍稽古に取り組んだ。私は女で新人で、だから頑張らないと追い付けない。彼等と並んで戦うことなんてまず不可能だ。毎日のように竹刀を握っていた。暫くは手にまめが出来て痛んだものだ。


…だから、あの時よりは。彼にちんちくりんだと言われて悔しがっていたあの頃よりは、強くなったと私は信じている。


「貴方の酷い言葉のおかげで、私は強くなりました」

「全力で嫌味言いに来てるだろィ」

「根に持ってますからね」

「女ってのはこれだから」


やれやれ、と言う風に彼はわざとらしく肩を竦めて、小さく溜め息のような吐息を漏らした。女というのは、昔のことをいつまでも覚えている生き物なのだ。いいことも、悪いことも。

「だから私は、」と。息を吸い込んでは口にする。


「…私は、自分のことは自分で護るし、…きっと、…絶対に、貴方のことも護ります」


沖田隊長は私をじっと真っ直ぐに見つめて、そっと目を細めた。


…いいことも悪いことも、私は覚えている。

私を護るために私の前に立ち塞がった彼のことを。私は覚えている。

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