【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

護られるもの ページ14

…私はまだまだ新人で未熟者で、自分が握る刀で誰かを救うことが出来るのかなんて、分からない。確かに、今まで道端で攘夷浪士に出会した際に剣を鞘から引き抜いて立ち向かっていったことにより、その攘夷浪士によって失われることがあったかもしれない命を。奪われることになったかもしれない平穏を護ることが出来たのかもしれない。けれど、それでも、犯罪者とはいえ一人の人を斬ったことは変わらない。それを正当化しようとは思えないし、きっと誰もが認める、テレビで放送されているような正義の味方にはなれないのだろう。善意のために戦っているとしても、その事実はなくならない。私達は間違いなく、人を殺している。そうやって生きている。それはもう既に受け入れたことだけれど、その躊躇いが私の中に一欠片もないと言えばそれは嘘になる。

…私達が戦うことにより、誰かが救われるのかもしれない。私達が私達の手で命を奪うことにより、護られる命があるのかもしれない。私達は間接的に、それらを護っているのかもしれない。けれど、それを確信することは中々出来ないもので。だって間接的なのであって、目の前で救われた人達が笑っている訳ではない。生きていることに感激してくれている訳じゃない。見返りがほしいわけではないけれど、たまに、彼等を粛清したことに意味はあったのかと、そう考えることがある。


見回りの途中で攘夷浪士と斬り合った日なんかは、特に。私は命を斬った。確かに一人の人間が、人でなしだったとしても人間が、この世から欠落した。私がさせた。そのことに、意味はあるのだろうか、と。答えの出ない疑問を、私はまだ私に投げ掛ける。少し前の私は、よくそんなことをしていた。けれど、答えはいつだって出なかった。

だから、信じるしかない。それによって、確かに、護られるものがあるのだということを。分からないのだから、信じて戦うしかない。そのことを信じていたから、私は今もこうして稽古をしている。


…それに。私には、明確に護りたいものが見えている。家族に、大事な仲間。友人に、そして、彼。


私は、私の中に居る大切な存在を護りたい。護りたいから、戦おうと思える。護りたいから、剣を握る。それが理由だ。


…そんな、強固な決意が。明確な理由があるのにも関わらず。ちゃんとそれが見えているのにも関わらず。私はそれを、言葉に出せないでいる。


…言葉にすることに、怯えている。


(……言わなきゃ、伝わらない…)


もう討ち入りは数日後で、もたもたしている時間は残っていないのに。

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