【不死川実弥】風柱、少女を拾う。

さんじゅうご ページ35

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ドタドタと、騒がしい足音が聞こえてきた。

驚いて振り返ると、不死川の視界に煌びやかな着物が入ってくる。



「さねみ!!」



次の瞬間不死川は、声を上げる間もなく懐かしい温もりに包まれた。

驚きながらAを引き離してみれば、彼女はその瞳から大粒の涙を零していた。


「お前、なんで……」


「やっぱり嫌なの！もう離れたくない！」



駄々をこねる子供のように、Aが泣きながら叫んでいる。


「どんな景色でも、どんなに美味しいものでも、それを一緒に見たいと思うのは、それを一緒に味わいたいと思うのは、全部さねみなの！さねみだけなの！」


そう言い終わるや否や、Aは再び不死川の胸板に頭を押し付けた。


そして今度は弱々しく口を開く。



「さねみのこと、大好きだから」


不死川は、そんなAの背に優しく腕を回した。

そして、もう二度とコイツを離さないと誓った。



「俺も、お前を愛してるぞォ」




愛してる。
そんな返事が返ってきて、Aの顔はどんどん熱くなっていく。



「私のこと、お嫁さんにしてくれるって意味で？」



「……その内、なァ」



ようやく顔を離したAの髪を、不死川はゆっくりと撫でる。


そして、フンッと鼻で笑った。



「酷でェ顔」


「誰のせいだと思う!?」



プクッと頬を膨らませるAを、不死川はギュッと抱きすくめる。



「ずっと傍にいるからなァ」


「絶対だからね」


「あァ、約束だ」



そう笑い合った二人が、静かに唇を重ねる。




そんな二人の様子を見守っていた椿は、長い欠伸をしてから再び眠りについた。



【END】

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