89阿部side ページ8
近くのそこそこ大きい病院の一室に柊はいた。命に関わるような怪我は無いが、精神的なショックで目を覚ましていないそう。
ガーゼで何箇所も覆われた柊はいつもの無邪気に笑っている姿とは大違いで、身体の奥底から怒りが湧いてくるのを感じた。
阿「誰がこんなことをしたんだよ。お母さん、誰が見た人はいないの?通報してくれたのは誰?何か聞いてない?」
大切な弟を傷つけられて、矢継ぎ早に質問するとお母さんは悲しそうな顔をしながらも凛とした声で「一度落ち着きなさい」といった。
母「通報してくれたのは柊の学校の子。今日の放課後に柊から助けてってメールがあったんだって。」
阿「他には何かッ」
母「亮平!」
急に大声で遮られてビクッと身体が跳ねた。
母「私は貴方のことも心配だったの!その怪我はどうしたの?今まで何をしていたの?
柊のことはその後よ。」
そうだ。柊のことで頭がいっぱいだったけど今の俺の身体は酷いことになっているんだった。
でも、いじめの事を話すわけにいかない。迷惑かけたくないんだ。
阿「友達の家に泊まってた。それでその後に喧嘩したからこんなことになったの。」
母「そんな嘘が通じると思ってるの!お願いだから言って…私もう亮平が帰って来ないんじゃないかって警察まで呼ぼうとしたのよ。」
阿「嘘じゃないよ…」
母「…柊が言ってたらしいの。『兄貴が危ない、兄貴が危ない』って。
ねえ、お母さんそんなに頼りない?」
柊が?どうして…。
阿「そんなことない。
…じゃあ、柊が起きたら話すからそれまでは何も聞かないで」
必死の訴えが通じたのか、諦めたのか、お母さんは小さく息を吐いた。
母「分かった。…その代わり、暫くは家で大人しくしておきなさい。あと貴方もお医者さんに診てもらいな。」
阿「うん。それも柊が起きたらで良い?我儘なのは分かってるけど側にいたいんだ」
母「分かった。じゃあ私は買い物してきても良い?」
阿「うん。柊のことは任せて」
母「お願いね」
部屋を出て行く母をみてそっと胸を撫で下ろした。他に何か怪我の理由を考える時間が出来たから。
母さんに心配かけたくないのもそうだし、親に言った事があいつらにバレたら写真をばら撒かれるかもしれない。そんな事されたら…本当に死ぬしかないだろ。
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作者名:霜 | 作成日時:2020年9月21日 18時