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長話に疲れた阿部は自身を落ち着かせるためにも長く息を吐いた。それから二人は動きもしなければ何も発しないでいる。
佐久間にはあまりにも重すぎる話で、同時に理解し難い話でもあったため頭の中を整理しているのだろうか。その大きな瞳をパチクリさせている。
しかし、とうとうその沈黙に耐えかねたのか目を書籍の方にやり、わざとらしくぬるくなったオレンジジュースを音を立てて口に流した。
佐「その後は?」
聞いた後で佐久間は後悔した。あまりに愚直な質問だった。阿部を傷つけてしまったかな、と恐る恐る顔色を伺うがそんな事は無かったようだ。
阿「多分想像通りだよ。それっきり家族とは会ってない。死体の処理はしたし、あいつらは行方不明ってことになってるだろうね。」
当たり前かのようにスラスラ話す阿部だがその目は揺れていた。しかし佐久間はそれに気づかない。
佐「じゃあ今どうしてるかは知らないんだ…。」
阿「いや、それは知ってる。画面を通して見てきたから」
佐「画面…パソコン?」
阿「うん。みんな前に進んでる。宛名だけ書いて仕送りもしてるしね。せめてもの罪滅ぼしだよ。」
佐「仕送り…」
一生懸命理解しようと必死な佐久間とはうって変わり、重くなった空気を変えるように明るく阿部は言う。
阿「そんな顔しないでよ笑。あのね、俺は家族とは離れちゃったからこそこのメンバーが大切なんだ。佐久間もそのうちの一人に入ってる」
佐「そう、なの?」
阿「ねえ、佐久間」
佐「なに?」
阿「俺は初めて佐久間を見た時からこの人は望んでこんな事をしてるんじゃない、って何故か分かったんだ。そしてこうとも思った。
助けたい、って。」
佐「え、」
阿倍のいう初めて見た時、は依頼が来て情報屋から買った資料を見た時、だ。
阿「佐久間は確実に助けを求めてた。それに自分を重ねたのかもしれない」
その言葉に佐久間はこの話が始まった時を思い出した。
佐「あ、だから阿部ちゃんは俺の事を気にかけてくれる。」
阿「そう。なんか他人とは思えなかったんだよね」
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作者名:霜 | 作成日時:2020年9月21日 18時