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54:話をしよう ページ4

スマホを開き、樹の名前を探す。

何度も何度も見てきた名前。あんなに愛おしさが溢れ出していたその名前を見たら、視界が歪む。




よし、

気合を入れるように小さく呟いて、その文字をタップした。



プルルルル、

呼び出し音が鳴る。1回、2回、3回、、、

なかなか繋がることのない電話にさっきまでの気持ちは既に折れそうだし、もう永遠に繋がらないんじゃないかとすら思えてくる。




やっぱり、やめよう、

電話を切ろうと赤いマークを押そうとしたとき。
繋がったことを示すように00:01、と通話時間が表示された。



慌てて耳元にスマホを当てる。





「もしもし、?樹?」

『ん、え、あ、うん』



どこかにぶつけたのかスマホの向こう側から『いてぇ!』なんて声が聞こえる。




「…慌てすぎじゃない?」

『うるせ、、だって…お前から電話かかってくるなんて思わなかったから、』

「…ごめん」

「謝んなよ」



なんか俺が悪いみたいじゃん、って樹が言う。

多分、今、すごい困った顔してるはず。
すぐに想像出来る。




「あの、樹」

『ん?』

「この前はごめん、その、逃げたりして」

『いや、あれは、俺が悪い』




突然来て、あんなこと言ったら誰だって逃げるわ、なんて樹は苦笑いをする。





「あのさ、」

『ん?』

「話、したい、樹と」

『…俺と今更話すことなんかねぇって言ってたのに?』

「…なんでそういう意地悪言うの?」

『ごめん、』

「ううん、ごめん。私が悪い、、ちゃんと考えたの。ちゃんと考えて、樹と話がしたいって思ったの…ダメ、かな、」



ダメかな、なんて聞くのは保険をかけてるみたいだ。

ダメだって、もうお前と話なんかしねぇよって言われても傷つかないように、ってバリア張ってる。






.

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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月25日 13時

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