73:宣戦布告 ページ23
「京本、?なに、」
何言ってんの、ってお構いなしにドクン、ドクンと鳴り響く鼓動を振り払うように言おうとしたら、それより先に京本が真剣な顔を崩す。
「お前、やばいわその顔」
くくってバカにしたように笑い始めた京本を前に1人取り残されたままの私はただただ呆然とするばかり。
「はい?」
「すっげぇアホみたいな顔してた、A」
こーんな、って顔真似してくるんだけどその顔がまぁまぁ腹立つ顔で。
それを見たらさっきまでのうるさかった鼓動はどっかにいってしまった。
「は?誰のせいだと、」
「俺のせいでしょ?」
「自覚はあるんだ」
自覚があるんだったら尚更タチが悪いんですけど?
キッと睨むと「こっわ、」なんてまたちょっとだけ楽しそうに笑い声をあげるから腹が立つ。
「っていうか」
「なに?」
「京本、私のこと避けてたんじゃないの?」
なんか知らないけど急に避けられて、なんなのって思ってたら今度はこんな風にまた急に前みたいに接してきて。
こっちがどれだけの間、京本のことで悩んだと思ってるんのほんと。
「あー、それ?それはもうやめた」
「は?」
「なんかさ、黙って我慢してんのバカみたいに思えてきたから」
「いや意味がわかんないんだけど」
全然話の全容が見えてこないんですが。
そんな私を尻目に目の前の京本はなんかもうスッキリした顔して、今にも鼻歌歌い出しそうな感じだし。
反対に私のモヤモヤはどんどん大きくなっていくばかりなんですけど。
「あのさ」
京本がこちらに真っ直ぐと視線を向けた。
さっきまでバカにした表情してたくせに、急に真剣な顔されるとなまじ顔がいいものだからどう反応していいか分からなくて困る。
「宣戦布告していい?」
あまりに京本が真っ直ぐに言うものだから、私はその勢いに押され、訳もわからないのに、こくんと頷くしかなかった。
「俺、もう我慢しないから。これからは真っ向勝負でいく」
アニメだったら、ビシッて効果音でもつきそうな勢いで人差し指を向けられて。
そんな風に言われるから困惑しかない。
困惑の渦の中にいる私を残したまま「誰かに横取りされんの嫌だし」なんて京本はなにやらブツブツ言ってるし。
「は、?え?なんの話よ」
「こっちの話」
京本はそう言うと満足気な表情を浮かべた。
そして「んじゃ、帰ろ。」なんて言って歩き出す。
私は訳もわからず、先を行く京本の背中を追った。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月25日 13時