67:内密に ページ17
昨夜は、結局上手く眠れなかった。
笑って終わりにしようと言ったはずなのに、結局最後は互いに顔も見れないくらいに苦しくなった。
最後に見た樹の表情を思い出すたび、ぎゅっと胸が痛む。
そりゃそうか。
3年も一緒にいたんだ。
しかも嫌いになって別れたわけじゃないから、余計に込み上げてくるものが多くあるに決まってる。
まだ上手く消化しきれない感情が体の中にゆらゆらと残る。
そこに若干の胃もたれが相俟ってなんとも言えない感じのダルさが体にのしかかる。
…嗚呼、高いお肉に慣れてない凡人の自分の胃が恨めしい。
結局、凡人は平々凡々と生きてるのがいいんだ
なぁ、なんてそんなところで気付いてちょっと悲しくなった。
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仕事は悲鳴をあげたくなるほど忙しくて。でもその忙しさは今は有り難かった、
結構ベビー目な会議を2本終え、やっと一息つけるとデスクに戻るとデスクの上にカフェオレが置かれていた。
「阿部くんんん！」
「なに、？」
急に大きな声やめて、心臓に悪い、なんて阿部くんが眉間に皺を寄せる。
「ありがとう、コレ」
手に持った缶をゆらゆら揺らすと阿部くんが戸惑ったような顔をしながら笑った。
「阿部くんのカフェオレにいつも癒されてるよ」
「ん、え、あぁ、うん」
「え、なにその感じ」
「いやぁ…まぁ、もういいかな？」
「なに？なんの話？」
こわいこわい、って慌てる私を横目に阿部くんは周囲をぐるりと見渡して何かを確認すると「内密にお願いね？」と首を傾ける。
その仕草あざといね？
「そのカフェオレ買ってるの、俺じゃないの。実は」
「…は、？」
「それ、買ってんの京本なんだよね」
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年9月25日 13時
