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8:食ったりしないよ ページ8

「歩くの早いんだけど?」


近づいてくる足音と、少し乱れた呼吸。

振り向くと田中くんが不満そうな顔をしていた。





「なぁんで先にいなくなっちゃうわけ?」

「いや、だって、」

「…俺の言ったこと冗談だと思ってた?」



私より10センチくらい高い背。

顔色を伺うように背中を丸めて近づけられて来た田中くんの顔。
よく見れば整った顔をしている。




「そういうわけじゃ、」

「じゃあ待っててくれたってよくね?」

「ご、ごめんなさい」

「俺だけがその気だったのかなーって思っちゃったじゃん」



口を尖らせてそう言う田中くんは、まるで子どもみたい。
そんな表情さえ、サマになるのだからイケメンってすごい。


なんで、田中くんは私なんかに構うんだろう。

他のみんなといたほうが楽しいんじゃないだろうか。





「ねぇ、Aちゃん?」

「は、はい」

「なぁんでそんな緊張してんの」



ふははって笑う田中くんの笑い声は柔らかくて優しい。




「とって食ったりしねぇよ」

「食う…、!」

「ねぇ、ほんとその反応!」



かわいーね、って言いながらお腹を抱えて笑う田中くんとその横で戸惑う私。


田中くん、すぐにでも女の子に手を出して食べそうだよ、なんて言ったら怒られそう。





「なんもしねぇよ、とりあえずは」

「…とりあえず、って」

「ふはっ、その顔やべぇ」



揶揄われてる、完全に。

やっぱり今からでも断って帰ったほうがいいんじゃないか、これ。




「んじゃ、行こ」

帰らせねぇよ、って田中くんは私の腕を掴んだ。
ゴツゴツしたその手から小さな熱が伝わる。


あぁ、帰るのは無理か。

諦めた私は、その手を振り払うこともなく、田中くんの背中を追いかけた。




.

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設定タグ:松村北斗,京本大我 , 田中樹 , SixTONES   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時

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