48:やばい3人組 ページ48
「おーい!Aー!!」
待ち合わせの居酒屋の入り口で、長身の男がバカでかい声をあげる。
久しぶりのそのテンションに苦笑いしつつ手をふり返す。
「久しぶり」
席に着き、とりあえずビールでなんて頼むようになった私たちは大人みたいだ。
「Aビール苦手じゃなかったっけ?」
「こーち、私もう25だよ?」
世間の酸いも甘いも噛み分けてんのよ、なんて言ったら高地くんは「へぇーお前意外といってんな」なんて言うし、隣のジェシーはそれ聞いて大笑い。
人の歳でこんだけ笑うの意味わからんけど。
そんな2人を横目に運ばれて来たビールを飲んだら「乾杯してねぇよ!」なんて高地くんが声を上げる。
はいはい、ごめん、ってジョッキをかかげると2人がジョッキを合わせる。
カチン、と鳴った軽快な音と一緒に「かんぱーい!」ってジェシーの大きな声が響く。
ほんとこの人に音声調節機能とかついてないのかな。
高地くんとジェシーは、樹の友達だった。
樹と付き合ってしばらくして紹介されてそこから何度も会ううちに仲良くなった。
いつも2人に会う時は樹がいたから、なんだかんだで樹抜きで会うのはこれが初めてだった。
「A、元気?」
「まぁそれなりに元気」
「それなりってなんだよ、それなりって」
「それなりにはそれなりしかなくない?」
「HAHA、こーち言われてやんの」
「うっせぇよ」
ジェシーがやいやい言うせいで話は全然進まない。
ほんと、この状況昔とちっとも変わらない。
なんて言うかカオス。
「高地くん、なんで連絡して来たの」
「なんでって、Aどうしてるかなーってジェシーとそう言う話になって」
電話でも言っただろ、ってめんどくさそうに言われたけど、高地くんの言うそれは真意じゃないことくらいわかっている。
「…樹のことでしょ、どうせ」
「HAHA、すーぐバレちゃった、こーち」
「なんでお前はちょっと楽しそうなんだよ」
相変わらずのテンションのジェシーと、もうやだって頭抱える高地くん。
それをただ真っ直ぐ見る私。
傍から多分やばい3人組だろうな。
「急に会おうなんて、そりゃ丸わかりだよ」
「バレないように上手くやったつもりだったんだけどなぁ」
高地くんから連絡が来た時点でなんとなく想像は出来ていた。
それをわかった上で今日のこの場に来てるつもりだし。
「なんか、大変だったな、」
高地くんはそう言ってビールを一口飲み込んだ。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時