39:お悩み相談室 ページ39
「なぁんかありました?」
その声にハッとして顔を上げると慎太郎さんが心配そうな顔をしてこちらを見ていた。
ううん、って首を振るとそう?なんて慎太郎さんが首を傾げる。
松村さんとこの店に来て以降、私は何かあるたびこの店に来るようになっていた。
ご飯も美味しいし、安いし、それになんとなく落ち着くっていうか。
慎太郎さんは私が通うようになったのをえらく喜んでくれて「北斗からこんな経済効果がもたらされるなんて思っても見なかった!北斗、神だわ!」なんて言われたりした。
今日も遅くなって、自炊する気にもなれず、かと言ってコンビニのごはんはなんとなく嫌で、悩んだ末にここに来た。
「来てからずっとため息ついてるじゃん、Aちゃん」
「そう?」
「えー自覚なし?」
それはやばいよ、なんてやけに神妙な顔して言うものだから思わず吹き出すと「ちょっと?!」なんて慎太郎さんは声を荒げる。
「なんかあったんだったら、俺でよければ話聞きますよ」
慎ちゃんお悩み相談室、意外と好評なんですよ、なんてニカっと笑う慎太郎さん。
その笑顔だけでも少し救われる気がする。
なんか、ほんと慎太郎さんは太陽みたいだな、なんて。
「じゃあお願いしちゃおうかな?」
「お、まじで!」
慎太郎さんの顔がパァっと明るくなる。むしろ明るすぎて眩しい。
これが陽キャパワーなのか??
「俺、もうちょいで上がりだから、そしたら一緒に飲みましょ」
愚痴でもなんでもバンバン聞くから!楽しみにしてて!なんて言うと、慎太郎さんはオーダーを取りに行ってしまった。
なんであんなに慎太郎さんが楽しそうなのかはわかんないんだけど。
オーダーしただし巻き卵を頬張りながら、ぼんやりと考え事。
そしたらまたひとつため息が口から漏れてテーブルにぽとん、と落ちた。
.
944人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時