36:腹黒の人 ページ36
「なんか、Aさんのいつもと雰囲気違くない?って話をしてただけで」
「んー?」
阿部くんの言葉を聞いて京本が私の顔を覗き込む。
いつも思うけど、こうやって改めて見ると京本はほんと綺麗な顔をしている。
「…いつもと変わんなくない?むしろクマがあっていつもよりブス」
「おい、京本」
正直言えば昨日はあの件があってから寝れなくて。気付いたら朝になっていたんだよね。
朝、必死にコンシーラーで隠したつもりだったけど、クマは隠しきれなかったらしい。
それにしてもそれをどストレートに言う京本にはデリカシーってものがないのかな??
「そっか、俺の勘違いかなぁ。なんかいいことあったのかなって。ほら、恋愛とかでいいことあったりするて女性は綺麗になるって言うし」
「はぁあ?!」
阿部くんの言葉に思わず、バカみたいな反応してしまった…そしたら、京本に睨まれた。ごめんなさい。
阿部くんってたまに核心ついたことを言うから怖い。
「お前、うるさ」
「ごめん、阿部くんが変なこと言うから思わず」
「え、俺のせい?」なんて阿部くんがまた困った顔してる。
イケメンを困らせすぎて、阿部くんファンの女性社員に刺されそう。
「で、どうなの?」
「阿部くん面白がってるでしょ」
「そんなこと、ちょっとだけ?」
「おい、阿部」
「あはは、でどうなの、正直なところ」
阿部くんがあまりに真っ直ぐな目で見てくるのが辛い。
何この状況。
こんな状況になるんだったら、京本に責められながら仕事してたほうがまだマシなんだけど。
「ノーコメントで」
「ノーコメントって言うときは大抵何かしらやましいことがあるときだよ」
そんなことを言って阿部くんは、何やら楽しそうにこちらを見てくる。
え、その笑顔、こわ。
阿部くん、絶対腹黒の人だよ、その笑顔。
「そ、そんなことないし!」
「阿部くんあんまいじめちゃダメだよ。こいつ、彼氏と別れたばっかなんだから」
「おい、京本!」
やめてよ、そうやって傷を抉らないで欲しい。
ある程度吹っ切れたとは言え、それなりのダメージは残ってるんですけど。
「えぇ、、なんかごめん」
「阿部くんのバカ!お昼奢ってくれなきゃ許さん!!」
「奢ったら許してくれるんだ?」
阿部くんはケタケタ笑うし、京本はなんかなんとも言えない視線をこちらに向けてくるし。
もう、なにこれ。
その場を逃げ出すように席を立つ。
…お昼、買ってこよう。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時