春鉛 (ページ31)

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31:返せよページ31

「ごめん、シャワー浴びちゃって」

「はぁ？」

「シャワー浴びてから連絡しようと思ってたら遅くなった」
ら
「あのなぁ、」

咄嗟に口から出た嘘。

別にやましいことはないけど、でもここに松村さんがいるってわかったら、なんかとんでもないことになりそうだし。

はぁぁ、って電話越しでもわかるくらいに特大の京本のため息。

その勢いは、そのままそのため息が耳元に降りかかるんじゃないかってくらい。

「俺がどんだけ心配したと思ってんの、」

「ごめんって」

「本当さぁ、、心配した気持ち返せよ」

「んな無茶な」

そんな心配されるほど、私フラフラしてる？
京本に心配されるとか結構やばい気がするんだけど。

「…まぁ、よかったわ。なんもなくて」

「なんもないのが普通だよ」

そう言ったら、またため息つかれた。

え、なんでよ。

「はぁ、、まぁいいや。早く寝ろよ」

「京本は私のお父さんなの？」

「お前が娘とか死んでもやだ」

「酷くない？」

「酷くねぇよ、じゃあな」

京本はそう言って早々に電話を切ってしまう。

いや、自分勝手すぎない？なんて、終話を伝える音を聞きながらため息をひとつ。

ほんと、明日また会社で会うのになんでこんなに心配されなきゃいけないんだろ。

スマホの電源を切って、部屋に戻ると、松村さんがこちらを見て「おかえり」と笑った。

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