22:同期 ページ22
運ばれてきた料理を互いに適当に摘みながら、隣の部署の誰と誰が付き合って別れただの、部長がハゲで悩んで育毛剤を使い始めただの、どこぞの部署の新人が夏休み中に飛んだとか、そんな話をぐだくだとする。
「あ、そういえば阿部くん、受付の子に告白されたらしい」
「でも断ったんでしょ?」
「あ、知ってたんだ」
「だって阿部くん、ずっと断ってるらしいじゃん」
イケメンで優しくて仕事もできる。
そんな阿部くんは、女性社員の中の人気も高い。
これまで秘書課の美人な先輩や隣の部署の新人の可愛い子や庶務にいた同期、色んな人が阿部くんに告白したけど悉く惨敗している。
別に彼女がいるわけでもないのに断り続けてるから一部の男性社員からは若干恨まれてるらしい。
そんなのモテない男の逆恨みもいいところだと思うけど。
「まぁ、阿部くんにも選ぶ権利はあるしな」
「まぁそりゃそうだけど。でもなんで彼女作らないんだろうね」
「さぁ?」
あ、焼き鳥美味しい。
なんてモグモグしてたら、京本が神妙な顔してこちらを見てくる。
「なに、京本」
「お前、もう彼氏のこと、大丈夫なの」
「引きずるほどやわな女に見える?」
「いや、全然」
「おい、京本」
樹のことは、別にもう引きずってない。
あんな別れ方をしたけど、まぁ一緒にいた3年はそれなりに楽しかったし。
それに、あの日、松村さんと話して泣いてスッキリしたから、だいぶ吹っ切れたったいうのもある。
「…あんま、無理すんなよ」
「え?」
「A、辛い時に素直に辛いって言えなくて溜め込むタイプじゃん」
一応、同期としてさ心配してんだから、なんて京本はそう言うとトマトを頬張った。
「…ありがと、京本」
「ん」
「京本もさ、早く好きな子と上手くいけばいいね?」
「…余計なお世話なんだけど」
詳しいことはわからないけど、京本はずっと片想いをしている子がいるらしい。
相手の子に彼氏がいるみたいで、諦めようかどうしようかって悩んでたのをいつだったか聞いた。
同期としては、京本にも幸せになって欲しいって思うんだよね。
普段、しょうもないことを言い合っていがみ合うこともあるけど、それでもやっぱり京本の存在は私にとって大きいものだから。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時