13:語弊 ページ13
「…辛かったですね、」
松村さんの手から伝わる熱があまりにも優しくて。
その温かさにまた視界が歪んだ。
「何かオーダーありますぅ?」
そんなしんみりした空気を切り裂くように店員さんの明るい声が降り注ぐ。
笑っちゃうぐらいにタイミング悪い。
「って、ちょ、北斗、女の子泣かせてんの?!」
「うっせーよ、お前、騒ぐな、邪魔すんな」
「大将、大変!!北斗が女の子泣かせてるー!!」
その馬鹿でかい声で言うのやめて。ほんと。
店員さんがいなくなるとまた静かになった私たちの席。
「すいません、ほんと、」
あとでシメときます、なんて言うけど松村さんが言うとちょっと本気っぽく聞こえる。
「まぁ松村さんに泣かされたのは事実なので…」
「ちょっと待って、語弊があるんですけど?!」
松村さんが急に焦って動くものだからテーブルがガタンと音を上げる。
「あはは、松村さん慌てすぎ」
クールそうに見えて、この人意外と面白い人なのかもしれない。
慌てふためく松村さんの姿を見ていたらいつの間にか涙は引っ込んでいた。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時