11:最低な誕生日プレゼント ページ11
「…なんで、」
「…できた、んだ」
「なにが、?」
「…ガキ」
また頭の中が真っ白になった。
子どもが出来た。
誰に?
それが私じゃないことは明白で。
ってことはつまりそれは、樹が浮気をしていたってことで。
「…意味、わかんないんだけど、」
「…ごめん、」
ごめんしか言えないのかよ、って罵倒出来たらどんなに楽だろう。
なのに苦しそうに何度も何度もごめんをくり返す樹を目の前にそんなこと言えなくて。
苦しそうに泣く樹をただ冷静に眺めることしかできなかった。
「泣きたいのはこっちなんだけど、…」
「、ごめ、ん…」
嗚咽混じりの樹の言葉が流れる川音に飲み込まれていく。
私も泣ければ楽になれるのに、こういうとき泣けないのはなんでなんだろう。
「樹、顔あげて」
私の言葉に顔を上げた樹の顔は、涙でぐちゃぐちゃで。
カッコいい顔が台無しになってるよ、樹。
「今までありがとう。お幸せに」
そう言って無理矢理作った笑顔の口端が小さく震える。
これが私にできる精一杯だった。
「…ほんと、ごめん、A、…、」
その場に泣き崩れる樹に背中を向けると、ゆっくりと歩き出す。
聞こえてくる嗚咽を振り切るように少しずつ足取りを早めて。
その一歩、一歩で樹と過ごした日々を踏みつけて壊していく。
歩くたび揺れる手首につけたブレスレットが無性に腹が立った。
最寄り駅について、早々に手首からブレスレットを取ると箱に仕舞い込んだ。
こんなの、持ってたって仕方ない。
「…最低な誕生日プレゼントだわ、」
いらない、こんなの。
私はブレスレットの入った紙袋を勢いよく、コンビニのゴミ箱に投げ捨てた。
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作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時