昔と今 ページ49
時間が経てば、解決する事だ。
なるべく皆から離れた席についたAを、わざわざ振り替えってまで見てくるものもいたが、徐々に馴れていったのか、しばらくして隣、近くの者と再び会話を弾ませるメンバー達。
だがそんな楽しく食事をとるメンバー達を見て、Aは少し寂しいと思っていた。
A(何もこんな遠い所に座るんじゃなかったな…)
やってしまった後悔に、ため息をついてしまうA。
すると隣からガタンと椅子引く音がした。
A(誰だろう…?)
ゆっくりと右に目を向ければ、そこには向こうで西蔭と食事をとっていたはずの幼馴染みの姿があった。
野坂「隣、失礼するよ」
A「…何でこっちに?西蔭くんと座らないの?」
思わぬ彼の登場に少し驚いた顔をするA。
野坂「…何でだろうね」
A「何それ?ちゃんと言いなさいよ」
どうせ一人で黙々と食べる自分をバカにしに来たのだろうと少し声を荒げるA。
そんなAをちらりと見て再び視線を目の前の食事に落とす野坂。
野坂「…Aが寂しそうだったから」
A「…!」
野坂からまさかの答えが返ってき、野坂を見ては目を見ひらかせるA。
A「何で…」
Aの聞きたい事を悟ったのか野坂は微笑んでAを真っ直ぐに見つめて言った。
野坂「分かるよ…何年も見てきたんだから」
自分の気持ちにすぐさま気づいてくれた野坂に不意にもドキドキしてしまい、Aの心臓がドクンと脈を打つ。
A(な、何照れてんの私…)
思わず視線を宙になげるA。
A「そう言う所…変わってないね」
野坂「そう言う所?」
A「悠馬さ…昔から私が落ち込んでたら一番に気づいて、真っ先に駆け付けてくれたよね」
そう言って儚げに笑みを浮かべるA。
A「私、嬉しかった。昔も、今も。だから…ありがとね」
野坂「…!」
何年ぶりだろうか。Aが自分にこんな笑顔を見せてくれたのは。
そんな笑顔に、思わず野坂は手の甲で口元を隠す。
野坂「…随分正直だね」
A「いつも正直だけど?」
野坂「まさか」
徐々に懐かしい感情が込み上げてきて、二人は顔を見合わせて同時に笑い出した。
お互いまるで昔に戻ったかのような感じがし、心が和らいでいた。
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作者名:きなこ x他1人 | 作成日時:2019年2月10日 0時