Distance -YF-

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F


君の瞳にもうオレは映ってない
『もう』…じゃなく最初からだったんだよね


沈んだ気持ちのままその日の仕事を終えてもたもたと着替えをしていたら背後であれこれとワガママを言うニカの世話を焼く渉の声が嫌でも耳に入ってきた。

遠慮なくワガママを言って甘える素直なニカ
きっとそーゆー素直なところが渉のコト惹きつけたんだろうな

オレはあんな態度取れない

嫌われちゃったらどうしよう
面倒くせぇって思われたらどうしよう

いつもそればっか考えてた

オレも本当はあんな風に素直に甘えたかった


唯一言えたワガママが自分のこの身体を抱いて欲しいと言ったコトぐらいだろうか

あの時、渉はどんな顔してた？

今、ニカに向けてるような優しい眼差しは一切無かった気がする


なのになんでオレとあんなコトしたの？

オレが誘ったから？

それともただ単に欲求不満だったとか？



分からない

もう何も考えたくない





すっかり手が止まっていた帰り支度を再開させて一気に済ませるとバックを引っ掴んで控え室を出ようとした。

「お疲れ！」





「あ、太輔待って！ちょっと時間いい？」


背中に投げかけられた声が誰の声かなんてすぐ分かる。

今更オレを呼び止めて、なんの用があるの？

すぐにそう聞きたかったけど他のメンバーがいる手前ダイレクトに問い質すコトも出来ずいつもの顔を貼り付ける時間を稼ぐようにゆっくりと振り返った。




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