Episode095 未来 ページ46
迅side
ぽつぽつと白い雪が降っていて、でも積もらない。夜は特に冷え込んで、もうマフラーを常備する季節。こんな時に屋上に出るのなんて、相当な物好きだけだ。
「何やってるの、Aちゃん」
基地の屋上。おれはその子がいるのが視えていたから、声をかけるためにここに来た。ヒューッと冷たい北風が吹いた。
「迅さん」
振り返ったその子は制服を着込んでいて、淡いピンクのマフラーを首に巻いていた。ぽつりとおれに言葉を返して、寒そうに手をさすった。
「別に、ちょっと考え事してただけです」
どんなこと?と訊こうとしたとき、この子が『今期の遠征部隊に選ばれなかったこと』と素直に答える未来と、『何でもない』と片付けられる未来が視えて、おれはそれ以上訊かなかった。
「Aちゃんはさ、ボーダー入ってよかったと思ってる?」
もっと、大きな未来がおれには見えていた。よほど確定した未来なのか、少し先の話なのにはっきり視えていて。おれは堪らなくなって屋上に足を運んでしまったわけだ。
「何ですか急に……」
おれが隣に並ぶと、その子はマフラーに顔を埋めながら目だけでこちらを見上げてくる。おれが何も言わないでいると、その子は視線を正面に戻した。
「ボーダーに入らなかったら、私は死んでましたよ」
え?とおれは訊いた。
「ボーダーに入るまでは、毎日退屈で、興味なくて、死んだように生きてました」
知らない。おれはボーダー隊員ではないこの子の姿を知らない。普通の中学生としてのAちゃんのことを全く知らない。一体どんな生き方をしてきたのだろう。過去に、何かあったのだろうか。
「でもボーダーに入って、楽しいんです。みんなに出会えて、自分の居場所ができて」
この子にとってのボーダーはただの仕事ではない。生きがいそのもので、大好きな場所で、自分の在りかたを見つけられた場所。きっとそうなのだと思った。
「心の底から、ボーダーに入って良かったって思ってます」
マフラーで見えない口元が、笑っている気がした。
「だからこれからも、ずっとボーダーのこと大好きだと思います」
「……そっか」
余計に、視えた未来に心が痛んだ。でもごめん、おれはそっちの未来を選ぶから。Aちゃんを”そうさせない未来”もきっとあるけど、おれはそうしないよ。
「、?なんですか」
ぽんぽん、と冷えた髪を撫でた。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時