Episode090 ページ41
Aside
ぴくぴく、と自分の口角が引きつっているのが分かった。太刀川隊の隊室。
「いやだからなんで私なんですか太刀川隊じゃなくて?」
「人件費がかかるからね」
はあ!と、微妙に死んだような目をした目の前の人物に言い放った。確かに仕事を四人で行えば四人分の報酬がいるけれど。
「ボーダーにはまだ正式な広報の隊員がいないでしょ、だから色んな隊員が請け負うしかないんだ」
「だからって……」
今隊室にいる太刀川隊は私一人で、目の前にいるのはボーダー幹部の唐沢さん。お金に関する仕事をしているらしいくて、大学時代はラグビーをやっていたそうだ。そんな上の人に、私は広報の仕事を頼まれた。内容は単にスポンサーの宣伝用の写真を撮るだけ、数枚程度だそうだ。それにしても全国に顔が晒されるのは抵抗がある。
「君なら、中学生でA級、可愛らしい容姿……っていうレッテルがついてくるし、宣伝効果は抜群だと思うんだよね」
「その可愛らしいはあれですよね、小学生とかに向けられる方のやつですよね」
容姿端麗などの褒め言葉ではなく、小さくて可愛いなど誤魔化されるときに使用される言葉である。動物となどに向けられるものだ。実際身長は平均身長だし物理的に小さくはないが。どうせ顔が幼いなどと抜かすのだ。
「トリガーの色を変えた隊員は少ないし、それも珍しくていいと思ってるわけでね」
唐沢さんは全然引いてくれない。今はボーダー隊員とはいえ、顔が知られているわけではないので普通に過ごすことができている。しかし広報の仕事をやると世間の人に顔がバレてしまうのだ。
「頼むよ、このスポンサーを逃すとだいぶ痛いんだ」
う……と私は言葉を詰まらせた。ボーダーのお金の事情は全然分からないけれど、お金が無いと困ることだけは猿でもわかる。
「わ、分かりましたよ……今度奢ってくださいね唐沢さん」
「もちろん」
はあ、とため息をついた。
.
撮影現場は和気藹々としていて割と楽しかったが、自分の顔が世間に流れることには依然として抵抗がある。そんな昼さがりのコンビニエンスストア。
「雑誌とか訊いてないんだけど……」
撮影した写真が使われたのは雑誌の表紙で、私は雑誌コーナーで一人愚痴をこぼした。最悪である。自分の顔面がこんな場所に……。「出水とか米屋にバレたら絶対笑われるな」と、想像しただけで憂鬱だった。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時