Episode089 ページ40
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どうしてこいつは他人のためにこんなにたくさんの感情を生み出せる?しかも全部痛くない感情、柔らかい感情ばかり、どうして。感受性が豊かな人間とは、この女のような人間のことを言うのだろうか。
「嫌われても平気な人なんていないでしょ、慣れるってことは諦めるって事ですよ」
「うっせえな、勝手に嫌ってくるんだから仕方ねぇだろーが」
諦める、それは確かに的確な言葉かもしれない。別に今更好かれたいとも思わないし興味はないが、これは諦めた末に辿り着いた答えのかもしれない。
「誤解を解けばいいじゃないですか」
「誤解も何も見た目通りの性格だろ」
「えー」
こんな見た目だからこんな性格になったのか、こんな性格だからこんな見た目になったのか。あるいはこんな能力のせいでこうなったのか。もう忘れたことだった。
「カゲ先輩ふつうの人なのに」
「は?」
ふつうの人、という言葉に驚きを隠せなかった。どう考えても俺は普通の人間よりも尖っていて近寄り難い、攻撃的な男なのだから。
「喋ってたら普通だし、優しいとこもあるじゃないですか。荷物運んでくれるとか」
そいつの内心が、ウソではないので困惑する。こいつは頭おかしいのだろうか。俺に向かって普通だとか優しいだとか、正反対の言葉を向けてくるなんて。どういう感性をしているのか、俺には皆目検討もつかなかった。
「バカじゃねーの」
「ひどいな褒めたのに!」
ぶー、とそいつは口を尖らせた。「可愛くねー」と俺はデコピンをする。そいつは痛そうに顔を歪めて自分の額を触った。
「お前ポジションは?」
「オールラウンダー」
見た目的にはスナイパーっぽいのにな、と何となく思った。ああ、しかし今接している限りの性格では、バリバリ斬りながらバンバン弾丸をぶっ放して派手に戦っていそうだなとも思う。
「カゲ先輩当てる、絶対アタッカーでしょ」
「あたりめぇだろ」
だと思った、とそいつは得意げな顔をした。俺が他のポジションをしているところは俺自身も想像がつかないし、誰に聞いても予想通りといったところだろう。
「今度ランク戦しろ」
「私強いですよ」
「それは俺が判断する」
俺はそう言いながらドアの方に歩く。あまり長居して他の隊員が来ても嫌だし、さっさと帰ってしまおう。
「じゃあなA」
「はーい、ダンボールありがとうございました」
にこ、とAが作っていない自然な笑顔を向ける。それを見て、俺は太刀川隊の隊室をあとにした。
「A、か」
あいつの感情は、全部温かかった。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時