Episode081 ページ32
Aside
うわ、と私はパネルを見上げて声を上げた。
10ー0。
誰がどう見ても圧勝なわけで、こんな勝負を見たのは久しぶりだった。おかげでランク戦ブースに来たギャラリーも多い。
「弾バカが言ってたのってこの人か」
「だろーね」
絶賛中間テスト期間の私と米屋は、ランク戦をお互いに禁止していた。でもやはりしたくて仕方ないので、数本だけ見て他人から学習するだけにしよう、ということでここに来たわけだ。そしたらこんなに面白い試合が。
「二宮、さん……」
以前出水が言っていた、トリオン量がとてつもなく多い射手。この間入隊したらしいが、もうB級に昇給している。仮入隊をしていたのかもしれないな。
「おいそこのお前」
不意に後ろから男の人の声がして、私と米屋は同時に振り返った。そしてその人物を確認して、「えっ」と声を上げる。
「太刀川隊の亜桜だな」
「わっ、私ですか?」
びっくりして声が上ずったのと、声を作ろうとしたのが重なって声が裏返った。ぶはっと米屋が吹き出したので、かかとで足を踏んでおく。
「お前の隊の射手に伝えろ」
私はぱち、とまばたきをして、その人物ーー二宮さんを見つめた。
「すぐに追いつく、とな」
瞬間私はぞわっと恐怖を感じた。自分のことではないのに、だ。完全に出水を敵視していて、下から迫ってくる感じ。怖い人だ、と思った。……それにしても、私は眼中にナシかよ。
「こえーこえー」
二宮さんが去って行って、米屋がそう言いながら制服のポケットに両手を突っ込んだ。そういえば二宮さん、私は今トリオン体ではなく制服を着ているのによく太刀川隊だと分かったなあ。
「今の時点で自分が出水より下だって認めてんだね……」
「まあそりゃ相手は弾バカだしな」
私は、ああいう人たちは自分の強さに対して傲慢になっていそうだという偏見を持っていた。だが二宮さんは違う……のか?格下であることを認めており、自分が一番強いとは思っていない。ある意味そういうところは出水と同じだ。
「あと言っていい?」
「なに」
「けっこうイケメンだった」
「お前ほんと年上好きな…」
クール系年上イケメン……か。迅さんとは全然違うけれど、それはそれで好きだ。この先彼が強くなったらファンになることができそうである。……と、このときの私は思っていたのだが。本当に人間は関わってみないとどうなるか分からないものである。
「また今度ランク戦頼もーかな」
その後、二宮さんから過度な塩対応を受けるようになるとは全く思っていなかった。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時