Episode080 ページ31
佐鳥side
元はと言えば自分が悪い。コケてパソコンを壊して、東さんに一緒に謝ってもらうことになって。おまけに友達の時枝充を随分待たせた。全部自分が招いたことだ。もちろん、少し好みの女の子にそんな鈍くさい出来事を暴露されてしまったことも。ああ、笑われてる……。
「なかなか面白いことするね〜〜、えっと……?」
「佐鳥賢です……」
「佐鳥くんね!」
亜桜、と東さんに呼ばれていたその人は、おれのほうを見つめて確かに佐鳥と呼んでくれた。やっぱり少し顔が好みだ。でも、心なしか東さんと話していた時より声が高かったような?
「でも大丈夫だよ佐鳥くん、鬼怒田さんすぐ怒っちゃうけど本気じゃないよ?」
そう言ってその人はふわっと笑う。「亜桜はよく怒られてるもんな」と東さんが加えて、その人はそれを否定した。
「あと佐鳥くんってコケたんだっけ?」
「ダ、ダサいって言わないで!」
恥ずかしさのあまり大声でそう叫んでしまって、後ろから二人分の男の笑い声が訊こえた。
「え?そうじゃないよ?」
しかし亜桜さんはさっきのように爆笑はしなくて、首を傾げながらそう言う。「え?」とおれは彼女を見つめた。
「私も階段から滑った時に咄嗟に弧月で支えようとしちゃってね、廊下ざっくり斬っちゃったことあるんだ」
へへと照れたように彼女は笑った。その時も鬼怒田さんに怒られたが、最終的に彼は怪我の心配をしてくれたそうで。これから受ける説教をどこかで憂鬱に感じていたおれの心が、少し楽になった。
「そんなことあったなそうえいえば……まあそういうことだ佐鳥、そんなに怖がらなくていいぞ」
東さんにぽんと頭を撫でられて、また心が軽くなった気がした。
「じゃ、そろそろ行くか佐鳥」
「うっ、はい……」
「じゃあおれは先に帰ってるから」
「結局帰るんかい!!」
待たせてしまった友達はひらひら手を振りながらおれたちに背を向けて歩いて行って、おれはそれにツッコミを入れた。
「じゃあ私も帰ろうかな〜。佐鳥くん頑張ってね!」
亜桜さんは、またふわっと笑って歩き出した。あれ、少しではなく、結構タイプかもしれない。
「亜桜、」
そしてその人が東さんの隣を通ったとき、東さんが彼女を呼び止める。「はい?」と彼女は東さんの方へ首を向けた。
「………」
「う、はい……」
東さんが何か呟いて、その人は苦い顔をして笑った。そして再び歩きだして、向こうの方へ消えていった。ああ、また会えるだろうか。
(亜桜、)
(はい?)
(猫を被るのも、程々にな)
(う、はい……)
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時