Episode068 ページ19
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分かる。一週間前の迅さんの台詞の意味が。
「挑戦する否かは君次第だ」
隊室に訪れた忍田さんが、私に向かってそう言った。そして忍田さんが隊室を出て行くと、私は「はぁあ」とソファーにダイブした。
「お前……さっきの話マジなの?」
「マジだから忍田さんが来たんでしょ」
忍田さんが隊室に訪れた理由。それは、私が黒トリガー風刃の適合者に選ばれたから。
「で、どうするつもりなんだ?」
風刃は適合者の数が多すぎるらしく、適合者の中から希望者で争奪戦を行うらしい。……そして、その適合者の中には迅さんもいた。迅さんと近いうちに戦るとは、このことだったか。
「どうって、私には太刀川隊がありますから迷う余地は……」
太刀川さんに問いかけられて、私はそう答えた。黒トリガーに挑戦するということは、S級に行くかもしれないということ。もしもS級隊員になれば、隊は組めない。そうなれば私は太刀川隊を抜けることになるわけで、黒トリガー使いになるかならないかは迷うところでないはず。
「いや、そこは気にしなくていい」
「え、」
思いもよらない太刀川さんの発言に、私は彼の顔を見上げた。"気にするな"?太刀川さんは、ひょっとして私が抜けたところで太刀川隊は別に困らないと思っているのか……?
「お前は遠征に行きたいんだろ、その近道が
ぱち、ぱち、とまばたきを二回した。太刀川さんは私のことを考えて言ってくれていた。私が早く奈那を探しに行けるように、自分の隊から抜けることも視野にいれて。反対されるだろうと思っていたから、正直驚いた。
「……ありがと太刀川さん、私挑戦してみます」
「戦れ戦れ。負けても経験になるしな」
「ちょっと!?」
しかし、太刀川さんの言う通りなのだ。争奪戦には手練が沢山いるだろうし、何よりも迅さんがいる。勝てるか分からないどころか、勝ち目は薄い。……だが、やってみる価値はある。
「亜桜ちゃんいなくなっちゃったら寂しいよ〜〜」
「ゆ、柚宇さん……!」
「安心しろ国近、こいつがS級に上がる見込みは薄い」
「太刀川さん?」
私が太刀川隊を抜けるかもしれないことを悲しんでくれる柚宇さんと、やっぱり私の実力を信じていない太刀川さん。S級に挑戦するとは言ったものの、ここを離れるのは少し寂しい。けれど、遠征に行きたいから。太刀川さんの言う通り挑戦したところで敗れるかもしれないが、やれるだけのことは、やってみようと思う。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時