Episode064 ページ15
.
三輪は、家族をネイバーに殺されのだ。それに比べたら私は、家族も学校も無事で、ボーダーに入ったのもただ憧れたからで。幸せな方だ。ただ一つだけ、私にもボーダーで上を目指す理由があって。……それは奈那が、ネイバーに連れ去られたこと。まだ生きていると信じているし、突然いなくなった時には辛かったけれど、遠征に行けばまた会えるかもしれないから。もう二度と会えない三輪に比べたら全然希望はある。だから辛いなんて言っていられない。私ができるのは、毎日訓練して、遠征部隊に選ばれるくらい強くなること。それだけだ。
「で?結局何があったわけ?」
基地のラウンジ。米屋と二人で向かい合って座って、今日の休み時間の話の続きを話すことになっていた。
「えっと……」
「あれ米屋とAじゃん、何やってんの?」
「出水、太刀川さん」
私が話そうとしたまさにそのタイミングで、出水と太刀川さんが現れた。「相席していいか?」と太刀川さんが尋ねてくるので、「はい」と私は返事をする。
「この話また今度にする?」
「いや、いい」
気を遣ってくれた米屋と、その隣に座りながら「何なんの話?」と訊いてくる出水と、私の隣に座った太刀川さんと。
「二人にも訊いてほしい話があって」
米屋が驚いた顔をした。
「私の、親友の話なんだけど」
.
「へえ、親友がネイバーにな」
「何でもっと早く言わねーんだよ」
奈那の話をすると、出水と太刀川さんは口々に声を上げた。米屋は黙っている。暗い話をすると米屋はいつもこうするのだ。
「じゃあお前が遠征こだわり出したのってそれが原因?」
「そー。入隊したときは気付いてなかったし」
確かにボーダーに入ったのは、憧れたという単純な理由。だけどこうやってA級に上がって、それでも上を見続けている理由は。それは単純な理由ではないと思いたい。
「お前は、秀次みたいにネイバー恨まねえの?」
米屋が優しい声のトーンで問う。太刀川さんが小声で「しゅうじって誰だ」と呟き、出水が「おれらの同期の三輪っすよ」と小声で返すのが訊こえた。
「……人並みの恨みはあるけど、でも復讐とか皆殺しにするとかは、考えてないよ」
三輪ほど思い詰めてはいないから大丈夫、と加えて告げる。ふーん、と米屋は安心したように返事をした。
「遠征、行くぞ」
「はい」
太刀川さんが私の頭に手を置いて、私は彼を見上げてふっと笑った。
286人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時