Episode063 ページ14
Aside
梅雨はジメジメするから嫌いだ。休み時間、私は机に突っ伏していた。窓際の一番後ろの席で、授業も寝ていたし……。雨の日って、何のやる気も出ないしなあ。
「あーさーくらっ」
「わっ!」
ダンッと机を叩かれて、ハッと頭を上げる。そこには米屋がいて、にやっと笑う無邪気な顔があった。
「米屋……なに、教科書でも忘れた?」
「ちげーよ」
今年は米屋と同じクラスではない。だから米屋がわざわざ私の席に来るときは、教科書を借りに来るときか提出物を写しに来るときだ。米屋は私の前の席に座り、こちらに体を向けた。
「昨日悪かったな、あとありがと」
米屋が優しく笑った。良かった、今日はいつも通りみたいだ。
「いいよ別に、大したことしてない」
大規模侵攻から一年が経った昨日。基地にはボーダー隊員がいるわけで、隊員の中には当然身内をネイバーに殺されている人も多いわけで。基地自体の雰囲気は暗かった。だけど三輪は、人一倍それが強くて。それを気にかける米屋も気が重そうで。ずっと嫌な予感はしていたけれど、案の定米屋の悪い癖が出た。まあ、訓練室に篭もるとは予想していなかったが。
「……秀次が、昨日のお前はオレのこと心配して来たんだって言ってた」
「へえ、」
「ほんとにそーなの?」
米屋はぐっと私の顔を覗き込んでくる。
「……まあそう、かな」
「なにそれ惚れちゃう」
「冷やかすな」
米屋が軽口を叩くので、私は米屋から目をそらした。そりゃあ米屋は優しいから、三輪のために何かできないかと考えることは予想がついていた。それが自己犠牲的な考え方だろうなということも。だけど本人に、心配したよ……なんて言うキャラではないので、なんだか恥ずかしい。
「……あともういっこ、」
なに、と私は目をそらしたまま問う。
「お前ネイバーになんかされたことあったっけ?」
「え?」
何の話だと私は首を傾げた。米屋は同じ学校なのだから、ウチが特に大規模侵攻で被害を受けてないことは知っているはずだ。
「昨日、三輪のそれに比べたら私のこれなんか全然なんてことない……って言ったろ。これ、ってなに」
米屋はさっきまでよりも真剣なトーンでそう言った。それを訊いて私は、ああそのことか……と納得する。別に隠していないことだし、言ってもいい。
「あー……それは、」
キーンコーンカーンコーン
「うおっやっべ、亜桜この話またあとでな!」
「りょうかーい」
言いかけたところでチャイムがなって、隣のクラスの米屋は慌てて走っていった。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時