Episode060 桜結び ページ11
米屋side
ザァァァアアア………
オレはぼーっと窓の外を眺めていた。今日はひどい雨で、暗い空がそこにあった。今年の梅雨入りは去年より早いらしい。亜桜のやつまた寝てんのかな……ってそうだ、二年は違うクラスだ。相変わらず登下校はあいつと一緒だけど、休み時間に話すことも会うことも減った。まあ普通そうか。
『なあ、お前今日基地行く?』
亜桜の癖がうつって、オレは学校にスマホを持ってくるようになってしまった。授業中、オレは返事が来るはずもないアイツにメッセージを送る。
そういえば、亜桜は基地に来るって言っていたっけ。
久々にランク戦でも戦ろうか、亜桜のやつ最近忙しかったからできていないし。ああでも、アイツが来るならそんな暇はないかもしれない。
窓の外は雨が強くなって、オレはますますアイツのことを考えた。
カタブツだからラインが返ってこないのは当たり前だけれど、それよりも気になることがあって。まあオレがどうこうできる話ではないのだが。
「……早ぇな」
あれから一年、か。
――――Aside――――
コツコツコツ、と靴を鳴らして、一定の場所を目指して歩く。もう今日は人が少なくて、すれ違う人はいなかった。
プシューッ
そしてその場所に辿りつき、私はためらいもなくその扉を開ける。
「何やってんの」
「………亜桜」
「………」
そこには驚いた顔をした米屋と、俯いたままで私の方を見ない三輪がいた。私は制服のまま二人のいる訓練室の中へ足を進める。時間はもう夜の九時を回っていた。
「何時間居たわけ」
「知らね、三時間くらいじゃねーの」
米屋がいつもみたいな作り笑いをしなかった。
「三輪くん、こんなことしたって何にもならないでしょ」
私は今日太刀川隊の隊室でデータを調べていて、基地に泊まるつもりだった。でもさっき出水からのラインを見て、訓練室に急いだのだ。
『米屋と三輪が訓練室こもってる』
それが届いていたのは午後六時、私が気づいたのは九時前。トリオン体は疲れないとはいえ、そんな長い時間殺り続けるなんてどうかしている。
「……さい、」
「え?」
「うるさい!お前のような奴には俺の気持ちが分かるはずが無い!」
三輪がそう怒鳴って、生身の私に弧月を向けた。米屋が「秀次!」と声を荒げても、三輪はそれを突き立てたまま、はあ、はあ、と肩で息をしている。
今日は大規模侵攻から一年が経つ日。三輪のお姉さんが、ネイバーに殺された日だ。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時