Episode051 ページ2
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とうとう、この日が来てしまった。
……現実味が湧いてくるほど、本気で嫌だ。私は向こうに座る米屋に視線を送って、気付いた米屋が『わかったから』と口を動かす。
「卒業生退場」
先生がそう言って、会場は拍手の音に包まれる。私もゆっくり手を叩いて、一人の人をじっと見つめていた。そしてその人が私の目の前を通る。するとその人と目が合って、その人は私にむけてひらひらと手を振ってくれた。私は拍手をする手を止めて瞬きをした。
「マジで卒業しないで欲しい」
今日は、私達の学校の三年生の卒業式。そう、憧れの先輩である迅さんが卒業してしまうのだ。私と米屋はクラス代表として出席することになって……式が終わって、私達は中庭で花道を作って卒業生を待つ。
「はいはい。あ、ほら来たぞ」
卒業生が校舎から出てくる。後輩が部活の先輩に色紙を渡したり声をかけたりして、別れっぽい光景が目の前に広がった。
「迅さん!」
「おお〜紗雪ちゃん、米屋」
私は勇気を振り絞って迅さんに声をかけた。その人はこちらを見て笑ってくれた。
「卒業おめでとうございます!」
「まーす」
ボーダーで何度か話す仲になったとはいえ、太刀川さんほど親しくもなっていなかったのでやはり私は緊張してしまって。私と米屋の言葉を訊いて迅さんは「ありがとなー」と返してくれた。
「寂しいです……」
「はは、本部行けばいつでも会えるだろ?」
いつでもとは言っても、迅さんは玉狛支部だしランク戦しにくるときくらいか会えないし。いやまあ学校でもなかなか会わなかったが。
「でもありがとな、Aちゃん可愛いとこあるよね」
ぽん、と迅さんが私の頭を撫でてくれた。その行為によって私の胸は高鳴るが、私は迅さんのファンであって恋愛的に好きなわけではない。これはファンサを受けた故の喜びだ。
「今ランク戦シーズンでしょ?確か新しく射手用トリガー取り入れてたっけ?」
「あー……まあ……」
そう、卒業式で頭がいっぱいだが、今は三月スタートのB級ランク戦真っ只中。実に、私が万能手になる!と大口を叩いてからはやくも二ヶ月が経過していたのだ。しかし、問題があった。
「ほんとはスタートまでに万能手になりたかったんですけど、間に合わなくて……」
私は、万能手にまだなれていない。
「でも、万能手になるのはいい選択だと思うよ。おれのサイドエフェクトがそういってる」
それを訊いて私は「本当ですか!」と声を上げた。うんと迅さんは頷いて、私はめげずに万能手を目指し続けることを決意したのだった。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時