第37話 ページ40
*レイ side*
カーラ「ようやってくれたなぁ……。とんだ愚弟を持って、お姉ちゃん悲しいわぁ」
その言葉とは裏腹に、カーラ女王は薄気味悪い笑みを浮かべる。
いつの間にか、私たちの後方には大勢の兵士が控えていた。
カーラ「盗んだ我が国の情報と、その後輩を返し。そうしたら、少しは罰を軽めに＿＿＿」
その女王の言葉を掻き消すかのように、
───一発の銃声が鳴り響いた。
レイ「先、輩……？」
銃声の主は……紛れもなく、チーノ先輩で。
彼が持つ拳銃の銃口は、真っ直ぐ女王に向けられていた。
カーラ「なっ…何を……！」
幸か不幸か、弾は腕を
カーラ「このっ……出来損ないでグズでどうしようもない不良品のくせに！！！ 姉であり女王であるこの私に楯突くなんてっ……！！」
チ「調子に乗んなや。俺は……あんたを“姉”だと思った事は、一度も無い」
肉親であるはずの女王を見据える彼の瞳は……今までに無いほど冷たく、鋭かった。
チ「けど……あんただってそうやろ？ 俺の事、一度でも“弟”だと思った事あったか？ 無いよなぁ!?」
カッと目を見開き、チーノ先輩は再び引き金を引く。
その弾も直撃はせず、女王の足元すれすれに被弾した。
「ひっ」と声を上げて女王が尻餅をついた隙を突き、チーノ先輩が手榴弾を後方の兵士たちに向けて放り投げる。
その爆音に負けじと、チーノ先輩は私に向かって叫んだ。
チ「レイっ！！！ 走れっ！！！」
レイ「えっ……!?」
動揺する私に、チーノ先輩は小さなメモリを押しつけるように手渡す。
チ「さっき言うたな!? 近くの森に、車を用意しとる！！ ナビ使ったら、絶対に我々国まで辿り着けるから！！」
レイ「まっ……待ってください！！ 先輩は!? 先輩も一緒に＿＿＿」
私の言葉を最後まで聞かず、チーノ先輩はドンッと私を突き飛ばした。
チ「曲がりなりにも、兵士やろ。何が一番大事か……君ならわかるはずや」
先輩のその言葉に、ハッと手元のメモリに視線を落とす。
チ「お前は、お前の護りたいもんのために走れ。俺は……俺の護りたいものを護るために、戦う」
レイ「先、輩……」
グッと唇を噛み締め、私は座り込んだままの女王の横を駆け抜けた。
カーラ「あっ……あの小娘を追え！！！ 殺してでも逃がすな！！！」
私の方に向かってきた兵士を、チーノ先輩がたった一人で食い止める。
その後ろ姿を最後に、私は二度と振り向かず走り続けた。
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空文 晴霧(プロフ) - suzurei/鈴玲さん» ありがとうございます！ 頑張ります！ (2020年3月30日 12時) (
レス) id: 9bc8a66818 (このIDを非表示/違反報告)
suzurei/鈴玲 - 更新頑張ってください…！応援してます！ (2020年3月30日 12時) (レス) id: 54995dabe3 (このIDを非表示/違反報告)
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