これが恋ではないのなら、【国見英】

《３４》 ページ41

「うわ〜やだやだ、知らんぷり？よくないよそういうの」


何言ってんだよお前。


「国見君のストーカーじゃない」


違う、お前の方がよっぽどストーカーだろ。


「やばいよね、そーいうの」


お前がやばいんだ、自覚しろよ。


「国見君に迷惑かけんなよ、気持ち悪い」


安心しろ、お前が１番迷惑だ。






「(冷静になれ、まだ駄目だ、落ち着け……)」


まさかのまさかだった。普通翌日決行とかする？どんだけ頭ゆるゆるなんだよ、勘弁してくれ。あの先輩とAが一緒にいるのを見て俺がどれだけ唖然としたかわかる？

今回であの先輩を潰す、その為には言い逃れできないように証拠を撮っておかなきゃいけなくて。ぎりぎり見つからないところでスマホに音を撮り貯める。そして必死に自分を宥めた。

口を開けば虚言に妄想、よくもそこまでツラツラ話せるなって逆に感心してしまう……というか、気を抜いたら今にでもあの先輩を殴り飛ばしてしまいそうで。



「……ほんっとイラつく、あんたみたいな奴っ！」



この台詞まで持ち堪えた俺を、どうか誰か褒めてほしい。だって冤罪甚だしい事を言い募っていた先輩は、剰えAに手を上げようとした。



「……何してんの？」



いや、ほんとマジで。

流石に我慢ならなくて、まるで今来ましたって風を装って話に乱入する。そしたら見事な変り身で、その先輩は俺に媚を売り始める。

しかもまるで「本当は私の事好きなんだよね？」みたいな事を言い出すし。嗚呼、冗談も大概にしてくれ。



「なーんか楽しそうなお話してたじゃないですかあ」



録音を流せば急に慌てだす姿は酷く滑稽で。自分の勝利を信じて疑わなかったの？その無鉄砲さで？……馬鹿じゃないの。

今俺はどんな顔をしているんだろう。あの先輩は俺を見て、顔を真っ青に染め上げている。失礼な話だ、ちゃんと嗤ってる(・・・・)のに。



「俺も入れてくださいよ、せーんぱい」



たかが２つ下の後輩に少しばかり脅されたくらいで怯えるんなら、最初から黙っておけばよかったのに。及川さんにフられた時点で諦めていればよかったのに。下手に欲張るからだ。

独りよがりで終わらせとけばよかったのに。こっちにまで迷惑かけんなクソ女。本当腹立たしくて仕方ない。



「……３秒以内に消え失せろ」



３秒やるのは、せめてもの慈悲だよ。

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