これが恋ではないのなら、【国見英】

《３１》 ページ38

『え、何？心当たりある？』

「……詳細伏せるけど、俺に告ってきた先輩」

『うっわ……』



凄く心の籠もった「うっわ……」だった。腹立つな。俺だって思うよ、「うっわ」って。



『でもなんで？』

「知らね……でも今朝『好きな人いるからごめんなさい』ってちゃんと断ったんだよ」

『……今朝？』

「今朝」

『タイムリーすぎんだろ……』



水瀬が呆れた、と言わんばかりのため息混じりの声をこぼす。ほんとソレ。あの女は行動力の化身か??心の底からやめてほしい。

しかし仮に本当に、Aの跡を付けていたのがその先輩だったとしたら。どうしてAに白矢が立った？俺に断られて、でもそれがアイツに直結するとは思えない。



「(……考えたくない、けど)」



まさかあの後、結局Aと衝突したのを見られていた？それで俺が言った “ 好きな人 ” というのがアイツだとバレた？それで……アイツに報復なんかを考えているとしたら、



「(……また、俺のせいで)」



どうか憶測であってほしい、でも今考えられる仮説の中でそれが１番筋道立っている。まだ未発だとしても、Aの不利益になり得るのは容易に想像が付く事で。



『国見？』

「え？あー……悪い」



そういえば通話中だった事を思い出す。電話口で急に相手が押し黙ったものだから、少し戸惑うような水瀬の声に、ハッと我に返った。



『まぁ、その……だからアイツの事、ちょっと気にかけてやってほしいっていうか。そんな大袈裟な事じゃないかもしれねーけど』

「……そんなの、俺じゃなくたってよくない？」



自分の声が酷く冷たかった。全部拒絶したみたいな、冷え切った声。訂正しておけば、Aがどうでもいいとか、そういうんじゃない。

でもきっと、俺が守りたいと思えば、大体が裏目に出る。それなら俺はじっとしてた方が得策なのではないだろうか。



『だろーね、別にお前じゃなくたっていいと思うよ』

「……」

『……って言われて、お前は納得するの？』

「は？」

《３２》→←《３０》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す