これが恋ではないのなら、【国見英】

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ついに何も言えなくなった先輩に追い打ちをかけるように国見は「こいつを呼んだのは俺で、そこ行く途中に先輩が話しかけてきたって訳です。第一水瀬って奴との件も完全に誤解ですから」と言った。

……いや容赦なし男かよ。



「青城の制服着た女子に後付けられてたって。聞いた瞬間、真っ先に先輩の事思い浮かびましたよ」

「なん、っで……」

「なんでって、こっちのセリフですよね。俺の事好きでもないくせに、Aのこと巻き込まないでくださいよ」



…… “ 好きでもないくせに ” ？

意味がわからなかった。先輩は昨日確かに国見に告白していた。なのに国見は「俺のこと好きでもないくせに」って言う。

しかし先輩には心当たりがあるようで私にもわかるほどに動揺を示した。



「……く、国見君？私昨日好きって言ったよね？この子の事だって国見君が好きだから、」

「……都合のいい事ばっか言いますよね、ほんっと尊敬しちゃいます」


そう言って国見はまた、スマホを構い始める。合間に「あー、めんどくさい」と呟いてるあたり国見らしいと思うけど、まだ何かあるのか。

そしてピッという音とともに流れ始めた音声



《まじであいつありえない！》



案の定とも言うべきか、また確実に先輩の声。今度は私が聞いた事ない内容だけど、絶対この人の声だ。

聞いているとそれは酷く不愉快というか、目を覆いたくなるようなもので。なんか女子の闇を知った気分。



《私をフルとかなんなの？『部活に集中したい』とか、は？そんだけ？》

《ちょーっとモテるからって調子乗んなっての！まじムカつくわ及川のやつ！》

《てか別に好きだったわけじゃないし！》



これを聞いた先輩はもう顔面蒼白だ。そんな先輩に容赦なく国見は話しかける。

その内容は要約すると「お前が彼氏が欲しいって理由で告って及川さんにフラれて荒れてるところ聞いてました」という内容で。

もう救いようのないものだ。



「本当に先輩、愚痴言うのは勝手なんですけど周り確かめましょうよ。俺すごい近くにいたんですよ」

「そんな、」

「それでその後言ってましたよね。『バレー部の違う人と付き合って見返す』って。知ってる先輩が悪く言われてたんでとりあえず物的証拠として撮っておいたんですけど、まさかこんな形で役に立つとは」



先ほどまでと同様、ニコニコとしている国見が再生終了ボタンを押す。

そのあと訪れた沈黙が、やけに怖かった。

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