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そして図書館中央部へ到着。するとそこには傷ついた徳田秋声と、自分の父親、そして上司の男がそこにいた。
「……なんやあれ、ワシあいつ知らんねんけど」
「確か、徳田秋声って言ってました。どうしますか?」
「もちろん、寄るやろ」
作之助はにんまり笑ってAの手を引き、人のいるほうへ歩き出した。こんなに強引な人は初めて見た。Aは男との馴れ合いが誰よりも少なかったので、作之助の行動パターンがよく掴めなかった。こんな人、なんだかすごく苦手なんだけど……それでいて憎めない。好きか嫌いかでいえばその中間。Aは男性に対する扱いが改めてわからなくなってきた。
「ちょ、なにしてんの!」
「……! 君は」
「オダサクこと、織田作之助! このお嬢さんと会ったからお司書はん二人いるか思ってもうたやろ。ほんまのお司書はんはアンタやろ、……まったくワシのいない間に知らん男連れて…………其方は誰?」
「ああ、彼は徳田秋声だ。さっきまで潜書に行かせていたんだ。さあ君、歩けるか」
作之助は口を尖らせ、不満を顕にした。しかし、それも一瞬のことで、しばらくすると作之助は司書である咎と共に疲れきった秋声の支え役に回った。
そんな彼らについていくと、小規模な診療所のような所にたどり着いた。この図書館は本当になんでもあるのだなと思った。診療所の手前にあった大きな部屋はきっと食堂かなにかだろう。下手したらここで一生住めそうな気もした。
「徳田、休めよ」
「……まだ、努力が足りないって言うわけ?」
「そうじゃない。今回の件に関しては完全にこちらの計画不足だった。すまない」
「…………」
秋声は呆れた、とでも言うような顔をすると寝台で横たわった。そして父と上司の男は困ったように顔を見合わす。
「館長すみません。本来は私が謝罪すべきでした」
「いやいや、これに関しては本当にこちらの落ち度です。一人で潜書を行わせようとしたのは完全に危険でした。東雲さんはこうならないようにしていただけたらそれでいいのですよ」
「すみません、ありがとうございます」
そんな社交辞令にも近いやり取りが繰り返されると、隣にいた作之助がまた口を尖らせてぶーぶー言い始めた。
「なあ……ワシ腹減ったんやけど」
確かに、言われてみればお腹が空いたような気がする。少女も、家を出てからこの帝國図書館に着くまでの間何も食べていないのだ。少女はいてもたってもいられず大声で父を呼んだ。
「お父様、お腹が好きました!」
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作者名:逆さ天然水 | 作成日時:2017年7月23日 9時