ATTENTION (ページ47)

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#K.Kenta ページ47

Aside

20時をちょうど回った頃、自宅前でタクシーを降りると
エントランス前で立ち尽くしている見慣れた姿を発見

金髪にサングラス、全身黒ずくめのマスク男

健太「あっ、遅せぇよどんだけ待ったと思ってんの」

「健太くん髪染めたんですね」

健太「そうさっき美容院行ってきた」

話を逸らされたことにも気付かず、よく分かったねなんて
嬉しそうに口が止まらない彼を横目にエレベーターに乗り込む

代わりにボタンを押してくれたその手は赤く凍えていて

無言のまま恋人繋ぎで絡め取り
私の上着のポケットに突っ込むと握る手に力が込められる

健太「今まで海青と一緒にいたでしょ」

「えっ、なんで分かったんですか」

健太「聞こえないフリしてたけどほんとは聞いてた」

" ごめんウーバー届いて聞いてなかったわ "

……あぁあの時か、なんて視線を逸らす

1日オフの今日は昼過ぎまで海青の家で過ごして
そこから買い物に行ったりジムに行ったりで今に至る

最近は本当に1人で夜を迎える回数が減ってきている気がする

健太「ねぇ聞いてた？」

「あぁはい、聞いてました聞いてました」

健太「じゃあ俺今何の話してた？」

「………」

健太「ほらやっぱ聞いてないじゃん」

肩をトンッと軽く押され、思わずバランスを崩すと
所謂壁ドン状態の至近距離で顔を覗き込んでくる健太くん

伏し目がちにゆっくり近付いてくる彼のお顔に
反射的にギュッと目を瞑った時だった

12階、と告げる音声と共に冷たい外気が箱の中に充満する

健太「あともう少しだったのに」

「……馬鹿、変態、非常識」

健太「とか何とか言って期待してたくせに」

謎に上機嫌な健太くんに腕を引っ張られたまま
家主の私を先導するように前を歩く彼に

本日最早何度目かも分からない溜息が漏れて止まらない

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