ATTENTION (ページ29)

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#H.Makoto ページ29

慎side

終日続いていたドラマの撮影が終わり
自宅に到着した頃には、とっくに日付も変わって午前1時過ぎ

「あ、おかえりまこ」

慎「……え？」

突然正面から聞こえてきた声にハッと顔を上げると

廊下の突き当たり、リビングへ繋がる扉から覗く見慣れた顔

「こんな時間までお疲れ様。お風呂沸かしておいたよ」

柄にもなく優しい笑顔でそう声をかけてくるAさん

なんでいるんすか？不法侵入で訴えますよ、なんて
多分普段の俺だったら冷たい言葉を投げかけていたと思う

「……ちょ、慎？」

慎「少しだけでいいんで」

気が付けば、上着も羽織ったまま
Aさんの華奢な腰を引き寄せ抱き締めていた

探るように首元に顔を埋めて深呼吸をすれば
いつもと変わらない彼女の匂いに一気に疲れが吹っ飛んでいく

疲労困憊状態の俺には全てが糖分のように甘くて

慎「あー、ほんっと癒しだわ」

なんて、ついつい本音を口走ってしまった

ハッと距離を取ると目を丸くしたAさんと目が合う
そして徐々に緩んでいく頬、嫌な予感

「……今なんて？癒し？」

慎「お風呂入ってこよ」

「え、ちょっと待ってもっかい言って！？」

慎「うるさい」

1人騒ぎ立てるAさんの横を通り過ぎれば
嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら引っ付いてくる

この程度の事、どうせ言われ慣れてるくせに

慎「ていうかどんな手口で侵入したんすか」

「合鍵」

「最近慎とご無沙汰だなぁって思って」

……結局理由はそれかよ

慎「わざわざ来てもらって悪いんすけど、今日も早いんでしませんよ」

労り目当てではなかった事実に若干苛立ちを覚えた俺は
当て付けがましく上を脱ぎながらそう吐き捨てる

人間の三大欲求中、正直今は睡眠欲が100

脱衣所の扉に凭れかかり、全裸の俺を見つめたまま
黙り込むAさんを横目に浴室に片足を踏み入れた時

「慎は何もしなくていいから」

慎「……何言ってんすか、」

下手したらこの人とは小学生の頃からずっと一緒にいるけど

未だに掴めない人だ

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