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〜スコッチside〜
「…どう、しよう…」
目の前の彼女は顔を真っ青にして、顔を苦く歪める。
言うならば困惑、絶望。
行き場のない震える手は服の裾をぎゅっと掴みシワを作っている。
普段の、今まで見てきた彼女とはまるで別人の様で
同時に事の発端は違えど、そんな顔にさせている原因を作ったのは間違いなく俺なんだと思うと胸の当たりが酷く痛む。
それでも繊細に言葉を紡ぐ
『難しい話かもしれない、
Aには…凄く嫌な話かもしれない。』
多分誰も“いつか”が終わってしまう事を触れてこなかったと思う。
決して現実逃避をしているわけじゃない。
“死”と隣り合わせな橋を渡っている俺達だからこそ、“いつか”なんて無に等しかった。
だけどAは違う。
その“いつか”を迎えるために今の俺達は居る。
けれど例えば今日、それができなくなってしまうかもしれない。
俺達の誰かが殺られてしまったら____?
俺がNOCだとバレて存在を消されてしまったら____?
そうしたらAは、
一人になってしまったAは立ち上がることが出来るのか____?
一人になったAに、
手を差し伸べてくれる“誰か”はいるか___?
終わりは突然に訪れる。
それを痛いほど分かってきた。
生温い湯に浸かっているだけでは駄目なんだ。
当たり前じゃない事を伝えなければならない。
身に染みている“俺達”だから伝えなければならなかったんだ。
『明日、俺達の誰か…いや、俺達全員がもう二度とAに会えなくなる。
名前も呼んでやれないし慰めてもやれない』
彼女の瞳が揺れ、
ボロボロと涙が零れ落ちる。
『いつそうなってもおかしくないのが俺達なんだ。
運命なんて、誰にも分からないし変えられない。』
彼女の頬を両手で包み込み
揺れる瞳を捕える。
『だからAには大切にして欲しいんだ。』
どうかAが、
俺みたいにはなりませんように。
どうかこの運命が、
Aにとって暖かい世界でありますように。
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作者名:うぃっぷ | 作成日時:2020年10月11日 23時