12.夢の中のきみ ページ12
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「先輩〜!こっちです!」
花見日和のある日。
満開の花の中で、ある男性が私に向けて手を振っていた。
顔はよく見えないが、私は何かに取り憑かれたように自分を呼ぶ彼に近づいた。
「ごめん、待った?」
「いや、今来たばかりです!あの…今日お弁当作ってきました」
へえ〜…この男は料理ができるのか。
キムジュンギュとは大違いだね。
そんなことを考えながら、はにかんだような笑顔を見せる彼を眺めた。
「あまり嬉しくないですか?先輩が食べたいって言うから作ってきたのに」
「あ〜、ごめん!ありがとう!嬉しい!褒めて遣わす!」
「それじゃあ、ご褒美くれますか?」
「ご褒美?……高いものは買ってあげられないよ?」
私のその返事に褒美をくれという話を肯定したと受け取ったのか、その人は嬉しそうな笑顔で再び私を見た。
「これから…ヌナと呼んでもいいですか?」
なんだかぼやけていた彼の姿が鮮明になっていくようだった。
「ダメですか?」
「いや、それは全然」
ジュンギュ「A!起きて!」
「ヌナと呼んでくれ……………うん?」
ジュンギュ「はあ?…………ヌナ、起きて!」
目を覚ますと、珍しく既に準備を終えていたキムジュンギュが私を上から見下ろしていた。
「なに…何?」
ジュンギュ「何って、遅刻するよ?」
「遅刻?」
枕元にあったスマホを手に取り、時間を確認してみると、ちょうど授業開始の30分前だった。
「やば……なんでアラーム鳴らないのよ!」
ジュンギュ「鳴らないんじゃなくて、自分で止めたんでしょ」
「…はあ」
ジュンギュ「あと、どんな夢見てたの?ヌナと呼んでくれ〜なんて」
キムジュンギュは私を小馬鹿にしたような顔で愚弄し始めた。
本当にあの夢は何だったんだろう。
ジュンギュ「新入生たちに色目使わないでよ…俺が恥ずかしい」
「は?なんで新入生?」
ジュンギュ「あの日から新入生で頭がいっぱいなんでしょ」
「………もういいから、出て!私今から着替えるから!」
ジュンギュ「Aのせいで遅刻したら許さないからね!あと、新入生に本当に手を出したら通報するから」
強烈な忠告を言い放った彼は、冷ややかな目で私を見たまま部屋を出ていった。
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扇子(プロフ) - みさん» いえいえ!こちらこそ読んでいただきありがとうございます!これからも更新頑張りますね☺️ (2022年6月26日 1時) (レス) id: 3dae27e4b9 (このIDを非表示/違反報告)
み - 更新してくださりありがとうございます! (2022年6月25日 0時) (レス) @page47 id: 4940a29e5c (このIDを非表示/違反報告)
扇子(プロフ) - ゆゆさん» わ!ありがとうございます!!嬉しいです☺️ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 3dae27e4b9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - おもしろすぎて最高です! (2022年6月3日 1時) (レス) @page41 id: 4940a29e5c (このIDを非表示/違反報告)
扇子(プロフ) - みつきさん» わ〜!!ありがとうございます!!嬉しいです☺️これからも楽しんでいただけるように頑張りますね!! (2022年6月2日 22時) (レス) id: 3dae27e4b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:扇子 | 作成日時:2022年5月19日 18時