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大丈夫なんかじゃない_2 ページ9

卒業まではあと2ヶ月足らずだ。
あと2週間もすれば、総合成績が開示され、それは希望配属先にも大きく影響される。
今の松田にとっては、どうでも良いと思えることでもあったが、
しかし、彼らがそうだと言える訳でもなくて。



(…首席で卒業、…出来る…はずだよな)



苛立ちが消化されているはずもない。
ふざけるなと、教官相手だろうが何だろうが、食ってかかりたい気持ちも腹の底で渦巻いていて。
そんな、まだ冷静ではない頭の中で、
彼らに迷惑をかけたかもしれない、などという考えが松田の中に浮かんでいた。
特に、入学当時からトップの成績を収めてきた降谷は、
これまで自分とともにあれやこれやと問題を起こしてきたにせよ、その優秀さは評価されているはずで。
萩原だって、景光だって,伊達だって、そうだ。


しかし今日の騒ぎは──。




そんなことは普段の松田なら、到底考えも及ばないことで。



Aの考え方が移ってしまったのかもしれないと、
松田は自嘲気味に小さく唇を動かすと、
ゆっくりとした足取りで掃除用具箱に近づいてデッキブラシを手に取った。



しかし、




「陣平ちゃんは、こっちだろ?」





パシリ、と手に取ったブラシを萩原に掴まれ、
代わりに渡されたのはつい先ほど脱いで適当に放置したばかりの自身のコートだった。




「…は?」



考え事をしたままだったその顔をふっと上げれば、
松田の目に映るのは、萩原と、彼らの似たような顔で。




「鬼塚教官も訓練の方に行ったみたいだしな。こっちは何とかなる」

「反省文も提出したし…な?」


萩原と伊達は、ほんの少し口角を上げて松田に軽く頷いた。



「反省文はさすがに誤魔化せないが、
…風呂掃除に1人いないくらい、どうにでもなるだろう」


先ほど、その立場を心配していた相手──降谷は、成績トップの優等生とは思えない発言をしていて。
それはこれまでの自分や萩原のせいでもあることではあるのだが、
そんな頭が回るはずもない松田は、戸惑い気味に眉を寄せていた。




「…桜庭さんも、…優也くんも、あのままじゃ、…心配だ。
小嶋っていうあの刑事は信用できそうだけど、…でも、どうしたって警察だろ。
桜庭さんたちにとっては、…辛いだろ」


松田をじっと見つめて心配そうに話す景光。
そして、ズボンのポケットから取り出したのは、1本のナイフだった。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年2月7日 18時

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