乾いた音_3 ページ3
その後、
Aと、景光に支えられるようにして優也もその場に現れた。
「松田！ここで何をしてるんだ！」
「…警察なんか、…クソくらえだろ。
お前らがモタモタしてっから、
ただでさえ…あんな事件があって、
なのに警察が…、お前らの上層部ってヤツのせいで…、
アイツらがどんだけ苦しめられたのか分かってんのかよ…！！」
鬼塚の言葉など聞く耳を持つはずもなく、
目暮の腕を掴んでいた松田は、その手で彼の胸ぐらを掴もうとして、
「「松田！！」」
それは、萩原と、駆け寄った降谷に制止された。
鬼塚も焦った様子で松田を止めようとするも、
納得がいかないように苛立ったままさらに身体を捩らせた松田。
だが、
『…松田さん！！』
その声に、ピタリと動きを止めた。
声が聞こえたからじゃない。
腰のあたり。
Aが、懇願するように横からしがみついてきたからだ。
『…やめて、ください』
Aは、目にいっぱい涙を溜めて、
フルフルと首を振って松田を見上げていた。
『だい、…じょうぶ、…で、すから』
唇を噛んで、言葉を絞り出したA。
苦しそうに顔を歪めたまま脱力した松田は、
そのまま、目暮から身体を引き離され、萩原と降谷に身体を預けた。
優也は、横から景光に抱きしめられながら、一度止まったはずの涙をただボロボロと流し続けていた。
「…松田！！何をやってる！！
うちの生徒が、お騒がせして大変申し訳ありませんでした…！」
松田にいつもの怒鳴り声をあげ、
そうして目暮たち捜査一課の人間にガバッと頭を下げた鬼塚に、静かな足音が近づいた。
それは、永倉のものだった。
「…お騒がせをして、申し訳ありません」
「…いえ」
首元に皺の寄ったスーツを整えるようにして、
目暮は複雑そうに、小さな声で答えた。
以前は上司だ。
ただ、立場上、今は捜査一課の刑事と警察学校の教官。
それなりの距離がある。
「ただ──」
続いた永倉の言葉に、目暮がピクリと反応した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：white12
| 作成日時：2023年2月7日 18時
