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甘くて、しょっぱい ページ17

それから1時間ほどした頃。

松田は、ある車の助手席で少々不機嫌そうな表情を浮かべていた。

流れていくいくつものテールライトを横目に、
ちらりと視線を向けた運転席にはハンドルを握る小嶋の姿。
後部座席には、Aと優也が寄り添って座っていた。





少し前。
精神科医とともに診察室から出てきた優也は、
松田に抱きしめられて泣いているAを見て、目を見開き、戸惑っていて。


Aは、優也が見つかって安心したせいだと笑って誤魔化していたが、
目を赤くしたままの優也は、微妙に口元を緩めただけで複雑そうな顔をしていた。
それは、心配してきてくれた様子の松田の姿に驚いたからでもあったが、
精神科医のカウンセリングを受けたとはいえ、
自分がしようとしていたことや、これまで抱え続けてきた簡単に消化できるはずもない感情のせいだった。









『あの、…小嶋さん、すみません』

「はい」

『ちょっと、寄って貰いたいところがあるんですが』



後部座席から、小さな声で小嶋に声をかけたA。



『米花デパートに、行って貰えないでしょうか』

「…あぁ、はい。良いですよ。ちょうど通り道ですので」


小嶋は、車内のデジタル時計をちらりと見て、軽く頷いた。






車はA駅から少し歩いたところにあるホテルに向かっていて。
米花デパートは、その途中にある。


警察病院を出たAと優也は、小嶋の車でホテルに送ってもらうことになり。

警察学校に戻った方が良いのでは、と心配したAに、

“大丈夫だ。門限までは、まだ時間もある。
…萩たちもいるからな。…気にすんな”

と行って、松田もそれに同行したのだ。
小嶋の車に、というのはいささか気分の良いものでもなかったが、
Aはともかく、十分に発育してはいないとはいえ、優也も18歳の男でそれなりの身長があり、背の高い松田を含めさすがに後部座席に3人という訳にはいかず。

必然的に彼が助手席に、という流れで今に至る訳である。


思わず溢れかけた舌打ちを、すんでのところで息と共に飲み込んだ松田。
横目に映る小嶋は、捜査一課の刑事だ。
しかし、警備を兼ねているのか、Aたちをホテルに送るなど、彼女たちの支えになっていることも理解できて。
優也のことが心配だということが一番なのだろうが、
小嶋の車で送って貰うことを拒まなかったことからも、
Aも、彼のことは多少信用しているのだろうことも、

理解できた。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年2月7日 18時

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