乾いた音 ページ1
「おい…!松田!」
前を走っていく松田を焦ったように追いかける萩原。
入口に立つ1人の警官がかけてきた声を無視し、2人はそのまま警視庁に入り込んだ。
松田からは、殺意に似た苛立ったオーラが沸々と滲み出ていた。
そして、
「…刑事、どこだ」
「ま、松田…」
彼らが一直線にたどり着いたのは、捜査一課のオフィスだった。
「は?」
「な、何だ、君は…」
「あの男は、確か…」
急に現れた無愛想な男にどよめくオフィスの中、
松田や萩原の顔に見覚えのある何人かが、訝しげに呟いた。
「あの事件の、…桜庭Aの両親が殺された事件の、
…斉木の──」
「松田!」
「父親が捜査を妨害したとかいうあの事件の取り調べしてる刑事を出せっつってんだよ!!」
松田の腕を掴み、制止させようとするような萩原の声に反応することもなく、
オフィスに響き渡った松田の怒鳴り声。
その言葉に、その場にいる刑事たちの顔色が一斉に変わった。
「な...」
「な、何を言ってるんだ!」
「何モタモタしてんだ…!あれからどんだけ時間が経ってると思ってんだよ!」
「松田!やめろ!」
焦って近寄ってきた刑事の男に突っかかるように言葉をぶつける松田。
そして、オフィスにいる全ての人間に言っているというように、
周りを見回しながら、
「…何、モタモタしてやがんだよ」
と、呟いた。
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作者名:white12 | 作成日時:2023年2月7日 18時