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面倒くさい男_8 ページ39

『悪いけど、”安室さん”。
貴方にこれ以上何かを話すつもり、ないの。』

「…」

『貴方と話していて…、彼に言われたこと思い出しちゃったから。
…面倒くさい同期のこと、…大事だと思ってた…人のこと、思い出しちゃったから。』

「…」

『同じ面倒くさい人間なら、
やっぱり、彼の方が…、ずっと良い。』


“彼”とは言っていない。
そう、安室に告げたにも関わらず、今度は自分から口にしたA。


“彼と同じ面倒くさい人間なら、
…僕も貴方の大事な人になれるかも、と思うんですけどね?”

先ほどの安室の言葉をそのまま返すように、
Aはふわりと笑った。




そして、ベッド脇の”安室透”というプレートに視線を落とし、
少しだけ困ったように眉を寄せるA。

彼は、”安室透”なのだと確認したように。


そして、

“それじゃ”

と、言い残し、松葉杖をつきながら病室を出て行った。





「ただ、…からかうつもりが、
…想定外だったな。」


そして、“からかうつもりだった”などと、
言葉にすることで自分を誤魔化すように、自嘲気味に笑う降谷。

本能的に引き止めたとはいえ、
涙を流してしまいそうなAに、何が出来たというのか。
今更ながら、抱きしめることなど――出来ない。
安心させるような言葉を、かけることも。

それゆえ、
口から出たのは、
あの頃の話を、Aの口から溢れたあの頃の話を、
もう少し聞かせてほしい、などという、”安室透”としてのお願いだった。


自分がどうしたかったのか。
とっさに掴んでしまったAの手首の熱を思い出すように、
手のひらを見つめる降谷は、Aが去った病室のドアへ視線を移した。


「大事だと思ってた人…か。
最初はそう口にしていなかっただろ…。
誘導尋問だったらどうするんだ。…公安なら、すぐさま説教だな。」


柔らかく、ニヤリを笑う降谷だが、
その瞳はどこか切なそうだった。


(…まだ、そういう感情が残っていた、とはな)


公安である以上、迂闊に近づき関わるつもりはない。
もし、まだ、大事だと思える相手なら尚更だ。

もう6年も経っているのだ。
同期であることは変わりはない。
大事な存在であることも変わりはないが、
それは、公安の部下も同じこと。
命の危険に晒されるようなことがあれば、気がかりであることも自然なことで。

自身に、まだ”そうした感情”が残っているとは、
――思っていなかったのだ。

松葉杖と尋問→←面倒くさい男_7



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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 開設しましたらお知らせしますね!ぜひ、高さんが描いて下さった夢主ちゃんを見てみたいです! (2020年2月16日 12時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 高さん» コメントありがとうございます。な...なんと、そんな嬉しいことがあって良いのでしょうか...。本作を読んで頂けているだけでも嬉しいのに、イラストを描いて下さったなんて本当に嬉しいです!実はtwitterはやっていないのですが、この機に...とも考えておりまして。 (2020年2月16日 12時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢主さんのイラスト勝手に書かせていただきました笑作者様見ていただきたいんですけどツイッターはやってないですか? (2020年2月16日 12時) (レス) id: 9e0ac4ae00 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - fujizakuraさん» 本作をお読みいただきありがとうございます。公開が遅くなり申し訳ありません。(8)は既に公開済みですので、引き続きお楽しみ頂けますと幸いです。 (2020年1月31日 14時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
fujizakura(プロフ) - 【8】がパスワードがかかっていて見れません (2020年1月30日 17時) (レス) id: 21ccb35895 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月20日 8時

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