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面倒くさい男_5 ページ36

『…ややこしいんだけど』

「そう、ですか?」

『…』


平然と、しかし優しい瞳で見つめられ、
すっと安室から視線を逸らすA。
そして、少し考える素振りを見せた後、静かに口を開いた。


『似てるって…、前にも、”ある人に”言われたことがあるの。』

「…え?」

『最初は冷たいやつだって言われたのかと思ってた。』

「…」

『…でも、小さくてもしっかりと咲いてるところが、
白くて凛としているところが、…似ていると思った、って…言われて。
その人に言われた、――大事な、言葉。』

「…え…」


視線を合わせず、そう”安室”に告げるAは、
笑うでもなく、不満げでもなく、しかしどこか柔らかな表情を浮かべていた。
先ほど、口論をしていた相手だ。

3年前。
圧力をかけ、捜査を中止させたのは貴方たちじゃないのかと、
憤りも感じていた相手。

しかし、それ以外の、それ以上の感情が、
まだ、Aには残っているのだ。

大事な、――人だと。


『…本当は、上手く思い出せなかったんだけど。
何だか急に思い出せたみたい。…ありがと。安室さん。』

「…」


そして、小さく笑ったAに、
“安室”はただ口を閉ざしていた。



『それじゃ。…お大事に。』

「…えぇ。」

『それと…、助けてくれて、ありがと。』

「…いえ。」

『でも…、そういう危ないこと、…もうしないで。』

「…」

『二度と、しないで。』


そう強い口調で言い残して、PCをカバンに入れ、
ベッドを離れようとするAだったが、
松葉杖を手にしようとして、ピタリとその手を止めた。


『…当たってたら…、もし、当たってたら、…どうする、のよ』

「…」

口にしたことで、1時間ほど前の恐怖が今更湧き上がってきたのか。
Aは、緩みそうになる涙腺をこらえ、唇を噛み締めた。

降谷の頭を掠めた弾丸。
もし、当たっていたら――。

そう考えると、
恐怖が、
いや、それだけではない何かが、
彼に対するものだけではない何かが、体の奥から湧き上がってきそうになり、
Aは、松葉杖を握ろうとした手を、強く口元に当てた。

Aの脳裏をよぎったのは、

彼ら――、降谷の隣にいた彼ら4人のこと。
そして、未だ目を覚まさない塔子のことだった。

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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 開設しましたらお知らせしますね!ぜひ、高さんが描いて下さった夢主ちゃんを見てみたいです! (2020年2月16日 12時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 高さん» コメントありがとうございます。な...なんと、そんな嬉しいことがあって良いのでしょうか...。本作を読んで頂けているだけでも嬉しいのに、イラストを描いて下さったなんて本当に嬉しいです!実はtwitterはやっていないのですが、この機に...とも考えておりまして。 (2020年2月16日 12時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢主さんのイラスト勝手に書かせていただきました笑作者様見ていただきたいんですけどツイッターはやってないですか? (2020年2月16日 12時) (レス) id: 9e0ac4ae00 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - fujizakuraさん» 本作をお読みいただきありがとうございます。公開が遅くなり申し訳ありません。(8)は既に公開済みですので、引き続きお楽しみ頂けますと幸いです。 (2020年1月31日 14時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
fujizakura(プロフ) - 【8】がパスワードがかかっていて見れません (2020年1月30日 17時) (レス) id: 21ccb35895 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月20日 8時

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