SNOW DROP II (7)【名探偵コナン/警察学校組】

面倒くさい男_3 ページ34

『上手(うわて)かどうかは知らないけど、
…それぞれの分野を突き詰めた人間が集まって、
得意な分野をそれぞれに担当して、補い合いながら、
連携しながら任務を遂行すれば良いって…、思ってるだけよ』

「得意な分野、ね」

『要は出来ることを出来る人間が…ってことよ』

「やるべきことを、それを実行可能な人間が遂行する…ってことか」

『正当な捜査は捜査権のある部署にしかできない。
得た証拠に…、正当な方法では得ることの難しい重要な証拠に…、
正当な証拠能力を持たせるのは、…それが出来る人間がやればいい』

「…」


“正当な証拠能力を持たせるのは――”
それはつまり、
公安なら出来るでしょ、と言っているのだ。


捜査権のない二課のAが調べた内容。
その上、令状を取る前の、ハッキングによって得たデータ。

許されるはずがない。
おそらく複数の法律に触れた行為だ。

処分は覚悟の上。
そう口にしたA。

しかし、それ以上に、
その証拠は、彼らを追い詰めるために必要なことであると強く考えていたからゆえの行動だ。
出来るだけ、他の人間を巻き込まないように配慮した上での。



彼女がやっていたことは、
到底許されることではない。
しかし、公安である降谷にとっては、
そうしたグレー、いや、既にかなり黒に近いやり方も、
そう珍しいものではないのだ。



『…って言っても、
そんな綺麗な組織じゃないことくらい、分かってるわよ。
身を以て、とでも言うべきかしら。前に、…伊達にも言われたし。』

「伊達？」


“綺麗な理屈が通るほど、警察組織は純粋な組織じゃねぇ、ってことだろ？”

前に伊達に言われた言葉だ。
もう、ずいぶん前のことだが、
理不尽とも思える何かがある度、脳裏に蘇ってくるのは彼のあの言葉だった。



『でも、捜査権を持っている部署が正当に捜査するのは当然として、
それぞれの部署がそれぞれのやり方で収集した情報を踏まえて、
事件を解決に導くのって、…何が悪いのか私には分からないわ。
…公安は、そうはいかないんでしょうけど』


「…ハハッ」


“やっぱり、Aは変わらないな。”


小さく呟いて、降谷はくしゃりと笑った。

面倒くさい男_4→←面倒くさい男_2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す