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鼓動_6 ページ46

「…そうじゃねぇから。
それに、…付き合ってくれとか、そういうの、
…良く分からねぇんだよ」

『…』


遊びなんかじゃないから。
だから――。


付き合っているのか否か、曖昧な関係。
軽い男だと否定できない萩原にとって、それを証明する術 (すべ)はない。


“付き合ってください”
“これって、付き合ってるのよね?”

そうした言葉は、これまで全て女の方から向けられてきた言葉だ。
自分から、それを確かめたい、それを確実にしたいと苦しくなったことが、
これまでにあっただろうか。



『…遊びかどうかなんて、
そんなの…分かる訳、ないわよね』

「…それは…」


誰にも証明などできない、と言われているのだろうか。
萩原にとっては、自身の軽い言動や行動を責められているような言葉だが、
俯きながら切なそうな複雑な顔をしているのはAの方だった。


『…でも』

「え?」


しかし、ふっと顔を上げたかと思うと、
真剣な目をし、Aは目の前の萩原の身体に、そっと手のひらを当てた。
彼の、胸のあたりに。


『…鼓動。』

「は?」


その言葉の意図をつかめず、
そして、急に身体に触れられ、そこをじっと見つめるAに、
萩原はあからさまに動揺した。


『…ただの遊び…なら、
こんな風に心臓の音、大きく…ならないと、思うから』

「…」


先ほどの噛みつくようなキス。
そして、包み込むようなキス。

その、唇が触れ合っているときに、必然的に触れるほどに近づいた萩原の身体。
そこから聞こえた、
いや、"感じた"、彼の鼓動。

自分自身のものだったのかもしれない、その大きな音。

自身の手の平で、それは彼の音だったのだと確信するAは、
ゆっくりその少し上の萩原の顔を見つめた。
その目は真剣で、少しだけ切なそうに、愛おしそうに細められていた。


『…だから、…信じてみようって…、
ちゃんと、思ってる…から』


今度は彼の肩に手を乗せゆっくり背伸びをするも、
じっと見つめる”それ”にはほんの少し届かず、悩ましげに困ったように小さく眉を寄せるA。

動揺していたものの、
ゆっくりと近づいてきた彼女に、同じく目を細めた萩原が少しだけ屈むようにして近づくと、
Aはふわりと口元を緩めて、彼に口付けた。


そして、唇を離し、静かに離れていくAを追うように、
彼女の目の前に自身の顔を近づけ、じっと見つめる萩原。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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