鼓動_5 ページ45
『…苦手、なの』
「え…?」
『そういう風に、…甘えるようなこと。苦手、なの』
「…」
『貴方は、その…、抱きついてきたり…、甘えてきたり、
そういう可愛げのある女の方が――』
“良いのかもしれないけど”
その言葉は、萩原によって吸い込まれてしまった。
軽く口を開けて、Aの唇を味わうように包み込んだ彼によって。
その、柔らかいキスによって。
「…そういうことじゃねぇって」
『…』
至近距離でやはり不満そうに言葉を漏らす萩原に、
Aは口を閉ざした。
上がる心拍数につられて悩ましげに眉をひそめながら。
そして、軽く頬に手を添えられたままではあるが、
唇が離れた萩原との間には、
やはり15センチほどの距離が空いたまま、だ。
「Aが良い」
『…え…』
「Aが好きだって、…言っただろ」
不満げだがストレートな萩原の言葉は、
確実にAの頬を染めた。
そして、少し考える素振りを見せた後、
困ったように口を開くA。
『…遊び、なんじゃないかって』
「…え?」
『やっぱり…、遊びなのかもしれないって、
どこかでそう…思ってしまって…』
「…そうじゃねぇって。
下心だけじゃねぇって、言っただろ」
今更、尚もまだそんな風に思ってしまう自分に、
萩原をどこか信じきれない自分に、A自身もまた、葛藤していた。
それは、度々軽さが垣間見える彼の性格だけじゃない。
素直になり切れない自分の性格も原因だった。
そのせいで、結果的に別れることになってしまった康太とのことも、
少なからず後悔もしていたのだから。
そして、度々、頭から離れなくなる萩原の存在。
好きだと伝えはしたものの、
彼を本気で好きになってしまっていることに気づいた以上、
遊びなのではないかと考えてしまう度に、尚更怖くもなる訳で。
優しく唇を重ねられる度に、
その不安は確実に募っていた。
葛藤するように俯き始めるAの小さな声に、
その言葉に、
萩原は彼女の頬から手を離し、眉をひそめた。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時