鼓動 ページ41
1ヶ月後。
萩原は、タバコをふかしながら陽が傾き始めた杯戸町の道を歩いていた。
ちらりと視線を落とすのは、スマホのディスプレイ。
そこに映し出されているのは、一通のショートメール。
それは、Aからのものだった。
向かう先は、Café Rainだ。
夜勤を終え、先ほどまで自宅で仮眠を取っていた萩原だが、
ふとAにメッセージを送ると、仕事であの店にいると返事が来たのだ。
まぁ、所謂、”会いに行っている”訳だ。
(…もうちっと…、まともに会いたいんだけど、な…。
まぁ、それ以前にっつーか…)
会うといっても、あのBarで顔を合わせ、駅まで一緒に並んで帰る程度。
あるいは、今のように萩原がAに会いに行くことはあっても、
デートのようにまともに会ったことはなく。
それは、警察官の萩原とフリーデザイナーのAの休みが合わないということも大きな原因だったが、
それ以前の、問題でもあった。
自分がこんなことを考えるようになるとは。
萩原は自嘲気味に笑うと、紫煙を吐き出し、
短くなったタバコを携帯灰皿へとねじ込んだ。
最近では、道端に灰皿が置かれていることはめったにない。
喫煙者に厳しい社会になったもんだ、と、
もう一度自嘲気味に口角を上げる萩原。
視線の先に見えるCafé Rainも禁煙だ。
以前、 菜々に怒られたなどと話していた松田のことを思い出した矢先、
まさしくその人物が、視線の先のCafé Rainから出てきたことに、
萩原は少し驚いた様子を見せた。
(松田も来てたのか。
…ま、 菜々ちゃんに会いに、ってとこか)
詳しく話を聞いているという訳ではないが、
恋人である 菜々に会いに、
松田が度々店を訪れていることは特に不思議ではないのだが――、
店の方へと進めていた萩原の足が、ピタリと止まった。
松田に続くようにして、Aが現れたからだ。
ただ、一緒に出てきたという訳じゃない。
何やら楽しそうに笑うAに、
松田もまた、眉をひそめつつも口角を上げて口を開いていた。
少し距離があるため会話まで聞き取ることは出来ない。
サングラスをかけた松田の表情は正確には分からない。
しかし、少なからず楽しげに互いに言葉を交わしていることは、分かる。
ジワリ、と、何かが湧き上がる感覚を覚える萩原。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (
レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです！(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2019年12月12日 17時
