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Liar_3 ページ34

その夜。

Bar Curiousで、
いつものようにエメラルド・ミストに口をつけるAは、
慌ただしく過ぎたこの3ヶ月あまりのことを考えていた。

北川のこと。
部長の言葉。
会社を辞める際、引き留めるようにして、
焦った様子だった湯川たち、部下の面々。

これまでのことも、同じくだ。

そして、思い出されるのは、
度々核心をついたような言葉で、
自分の葛藤を、貼り付けてきた笑顔を、見透かしてきた男のこと。


下心だとか、
弱みに付け込もうとしたのかもしれないなど、
最低なことを言いながら、
放って置けないだとか、傷つけたくないだとか、
葛藤している様子で、告白をしてきた男だ。


そして、結果的に、
それらの言葉は、
彼の存在は、
大きな決断をするための決定的な後押しとなった。


目まぐるしく過ぎる日々の中で、
忘れていた訳じゃない。

だから、お礼を言ったのだ。
本心から。


あれから何度も、
…今日も、顔を合わせている。

気まずさが無かった訳じゃない。
それでも、拒絶は出来なかった。

むしろ、言葉を交わしたいと、…思った。
顔を見て、安心したような、何故か暖かい気持ちになるような、
そんな感覚が、あった。


それは、
見て見ないふりをして来ていた自分の弱さに気づかせてくれた人物だからだろうか。
人生の大きな決断の後押しとなった人物だから、だろうか。

…感謝の意図から、気を許し始めてしまっているのだろうか。


そう、考えていた。

萩原が負傷したと、ニュースで聞いた時のように。

なのに――、
ザワザワと湧き上がる感情に、少し困った顔を浮かべるA。


カラン…


そして、入口のドアが開く音に、
ゆっくり顔を向けるAは、やはり困ったように軽く口角をあげた。



――萩原だ。


「来てたのか」

『…まぁ、ね』

「…やっぱり、今日もそれなんだな。」

『…好きだって、言ったでしょ』


Aの手元のグラスに視線を向ける萩原は、
柔らかく口角を上げた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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