認めるしかないだろ。_4 ページ17
『…放っておいてって、何度も言ったでしょ』
「…あぁ。」
『…何も、無いからって。言ったでしょ』
「…あぁ。」
『…何で、そうやって…』
苛立ちを隠しきれなくなったAは、
ピタリと足を止めると、
わずかに揺らぐ瞳で、萩原をキッと見据えた。
『強がってることなんて…、
そうすることで拗れることもあるって…、そんなの言われなくても分かってるわよ…』
「…」
『強がってないと、…乗り越えられないことだってあるのよ。
適当に笑ってかわしてないと、上手くいかないことだって…』
少しずつ俯いていくAを、
萩原は目を細めて見つめていた。
『…彼氏にさえ、弱音を吐くことなんて出来なくて、
愛想尽かされる女よ。
…自分が嘘つきだなんて、貴方に言われなくても…分かってるわよ』
「…」
そんな話を聞きたい訳じゃない。
そんな風に苦しい顔をさせたい訳じゃない。
俯きながらAの口から零されるその言葉に、
それに同調でもしたかのように、萩原は苦しげに眉をひそめた。
『貴方のおかげだって、…思ってた』
「…え?」
そして、小さくなっていく声でポツリとこぼされたAの言葉に、
驚いた様子で目を見開く萩原。
『そう、思ってた。
…嘘つきだなんて、そんなこと言われて、
抵抗すれば良いだなんて簡単に言われて、…腹が立った。』
「それは…」
『でも、強がって、言いたいこと言えずに上手く立ち振る舞おうとしている自分が、一番嫌で…。
だから…、でも、結局、どうにもならないことだってあるの。
…だったら、やっぱり、気づきたくなかった』
「…え…」
『貴方のせいで、上手く嘘がつけなくなった…。
強がってても、嘘ついてても、
積み上げてきたものが壊れず、今までどおり上手くいくなら…、
やっぱりそれで良かったんだって、思って…。
…でも――』
キュッと口を閉ざすA。
“そう思ってしまう自分が、やっぱり嫌で”
それは言葉にならなかった。
これ以上言葉を紡ぐと、酷いことを言ってしまいそうだから。
貴方のせいだと。
そして口を開けば、
噛み締めた唇を離してしまえば――、
耐えている涙が、溢れてしまいそうだったから。
「…悪い」
『…』
謝ってほしい訳じゃない。
そうじゃない。
でも、ポツリと零された萩原の謝罪の言葉に、
唇を噛んだまま僅かに顔を上げようとしたAだが、
それは出来なかった。
今にも泣いてしまいそうに瞳が揺らいでしまっていた、から。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時